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祝杯…4*
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翌日。誕生日は一日中ふわふわとした状態で過ごしていた。何人かに抱かれ、何人かを抱く。間に酒を飲み、ケーキをつついて談笑。浮ついた雰囲気は店全体を包み、結希の客以外からもお祝いの言葉を掛けられる。店内はいつにも増して賑やかだ。
いつもとは違う眠気が纏わり付く。心地良い倦怠感と痺れるような多幸感。今ベッドに潜り込めば三秒で眠れるだろう。吉川が組んだ予約の配分は絶妙で、疲れは感じるものの辛いという程ではない。何人かは翌日に回したと聞いた。
「よ、人気者」
客の注文したカクテルを自らカウンターへ取りに行った結希の側でシュンヤが声を掛けた。
「ありがたいよね」
「ま、あれだけ派手にブログで宣伝すれば、ユウキの場合持ってるお客さん多いからこうなるよな」
「ちょっと頑張ってみました、更新」
圭悟の仕事と違い、店の決まりで客と連絡先を交換できない結希は、こういうイベントがあっても営業の電話は掛けられない。毎回マネージャーに言われて月に一、二度、渋々更新していたブログを今回に限っては毎日まめに更新し、誕生日へのカウントダウンまで書いた。それは一緒に暮らす圭悟の仕事ぶりを間近に見て触発されたところが大きい。
「心境の変化?」
「今月ほら、一週間休んだから巻き返さないと」
「お? ナンバー3の意地ってやつ?」
「そんな感じ」
「ユウキに本気出されたら俺がヤバイって」
「まさか」
シュンヤに向かって笑いかけると、マスターからカクテルを受け取り、席へと向かう。夕方から出勤していたスバルと初めてすれ違う。
「オハヨーゴザイマス」
「ああ、おはよ」
ハルとシュンヤにしか真面目に挨拶をしなかったスバルに声を掛けられ、結希は驚きに一度目を瞠るが、すぐに表情を緩めて挨拶を返した。聞こえていたのだろう、振り返った後ろでシュンヤも驚いた顔をしていた。
仕事への向き合い方を尊敬している、と圭悟は言った。仕事の内容を彼は初めから問題にはしていなかった。だから、それに応えたい。
とはいえ、出来ることは限られている。策を弄するのに向いていないことはこの間のストーカー騒ぎで実感した。周囲に迷惑は掛けられない。ただこれまで以上に、丁寧に、真摯に接客と営業をしただけだが、それでもこうして結果はついてくる。
「ユウキ、雰囲気変わったな」
カクテルを前に置くと、隣で四十過ぎの男が結希の肩に腕を回して抱き寄せた。年の割りに脂肪の少ないがっしりとした男の身体に寄りかかりながら、結希は顔を男の方に向けて口許を綻ばせた。
「今日からオトナですから」
「色気が出てきた」
「オトナの色気? それ、酔っ払ってるだけかも。今日もうだいぶ飲まされちゃったから」
男とは半年ほどの近い付き合いになるが、未だ名を知らない。「男を買っている」と周囲に知られるのは普通の風俗に通っていることを知られる以上にリスクが高いため、こうして個人情報の一切を教えて貰えないことは多い。けれど、男がとても優しい愛撫で徐々に結希を拓いていくことを身体は知っている。
指先が耳を撫で、首筋を辿り、また耳を嬲る。男がカクテルを口に含むのを、結希はただ見つめる。口はもう笑みを浮かべてはいなかった。口内の篭った熱い息を吐き出す。
近づく唇に、そっと目を伏せる。すぐに唇が重なる。性急に唇を割られ、口を開く。甘い、カクテルが流し込まれ、その冷たさにすら快感を覚えた。
「ん……っ、ふ」
喉を鳴らし呑み込んだカクテルは、甘さに反してアルコールが強く、脳を痺れさせた。差し込まれた舌を貪り、夢中で絡めて軽く歯を立てる。
男の襟元を掴んだ手は、彼を押し返そうとしているのか引き寄せようとしているのか曖昧だ。もう一方の手が行き場を失い自らの膝の上で握り拳を作っていた。
互いの口内からカクテルが消えると、口付けは更に深くなった。愛され続けた身体は簡単に火がついて、もっと愛されたいと、貪欲な体内の奥深くが甘く疼いた。
男の手が、膝の上で握り締めた結希の手を取り、彼の股間へと導く。そこは着衣の上からでも分かるぐらい固く張り詰めていて、今度はこれを、愛したいという欲が湧き上がる。
「も……、欲しい」
離れた唇がわななき、淫らに強請る言葉が無意識にこぼれ落ちる。潤む目の浅ましさに結希は瞼を伏せた。
「悪い子」
「……うん」
どちらからともなく立ち上がり、席を後にする。
互いの身体を密着させたまま、地下のプレイルームへ向かった。
西沢が押さえていた部屋は高層階からの夜景が綺麗なホテルだった。
深夜と呼ぶにはまだ早い夜の十時。眼下に煌めく街明かりの元では、視認できないが多くの人が行き交う。
結希は西沢を窓辺に立たせ、暗闇に映える鮮やかな水色のドレスを背後から抱き締めた。
「ね、すごく逢いたかった」
大きく開いた襟ぐりから晒された背中に口付けた。結希の方が十センチ程背が低く、様にはならないものの、西沢は僅かに背を震わせた。
襟元から手を入れ、中年特有の脂肪が乗った胸を探り、そこに息づく乳首を探し当てて指でゆっくりと摘まむ。大きく開いたスリットからもう一方の手を忍ばせ、ストッキングの肌触りを楽しみながら太腿を撫でると西沢が大きく息を吐き出した。
「ユウキちゃ……」
「ナオ」
下の名をもじった愛称で呼ぶ。スカートの下で中心には触れず、脚の付け根ばかりを這わせた手に、西沢が堪えきれないというように腰を突き出す形で窓辺のボードに手を付いた。逃げる腰を背後から押し戻す形で突き、自身の昂りを相手に伝える。散々焦らした後に触れた相手の股間はストッキングの内側で盛り上がっていた。
「ごめんなさい……」
「どうして?」
「だって……」
西沢は毎回謝る。「こんな汚いオカマ抱かせて」とからかうママの言葉が脳裏に蘇る。その場では罵り合いを楽しむ西沢も、二人きりになるとこうしてしおらしくなり、そこがいじらしい。
「俺の方こそ」
ハタチになって初めて抱くのが西沢なら良かったのに、と結希は思う。ハジメテの「女」になるか、長く一緒に居るかを天秤にかけて西沢は後者を選んだのだろう。だが昨夜であれば両方を獲ることができた筈だ。
店で仲間が祝ってくれた前夜。西沢はそのことを知っていたに違いない。いつでも彼は、彼女は、憎まれ口を叩き、結希をからかい、最後には結希のことを優先させる。
「ありがとう」
謝罪を飲み込み、代わりに感謝を伝えた。
唇で肉付きのよい背中を愛撫し、胸を弄りながら直接性器を握る。濡れたペニスをゆっくり扱くと、西沢が甘く声を上げながら身を捩る。ぴたりと背後から密着し、横へ振る首を固定した。
「ナオ、かわいい」
結希は興奮した息を深く吐き出し、窓ガラスに映る情欲に溺れた西沢の顔へと話しかけた。ガラス越しに、目が合う。西沢が恥ずかしそうに俯き、紅い唇を噛む。
ドレスが汚れると訴える西沢のスカートをたくし上げ、ストッキングを下着ごと擦り降ろした。背後から股の間に自身を挿し入れ深くグラインドを繰り返すと、どちらのものとも分からない先走りで西沢のそこはまるで女のように濡れた。
西沢の口に指を入れ、舌を追う。くぐもった喘ぎにニチャニチャと隠微な音が絡みつく。口の端から垂れそうになる唾液を掬いながら引き抜くと、今度は腰の動きに合わせてアナルへと押し込んだ。
目の前に広がる冷たい夜景に相反して、二人の呼吸は熱く、荒い。窓が、白く曇る。
「あぁ、アア、ユウキちゃん……! もう、もうっ、挿れて……っ」
切なく上がる声に促され、結希は一度身を引くと、濡れて卑猥に光る西沢の秘処に自身のペニスを宛てがった。
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