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BL Land「2014 Valentine」Tour{増刊特集}
ハッピーショコラ!!! ■六粒目■
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その打ち合わせには、ソウジは完璧な女装男子として臨んだ。
タカヤナギが打ち合わせをエンターテイメントというなら、僕はそのイメージを掴んで、イメージどおりに猟犬のように脇目も振らずに追うだけだ、と思う。
いつだって彼の指示を仰いで、尻尾を振って待っている。
眼の動き、指での遠回しな指示、全てを拾い上げて、モノツクリに流し込む、それが自分の役割だと思っている。
タカヤナギもそれを望んでいるし、忠誠を疑いもしない。
ソウジは、投げられた小枝を、上手に取りに行けたかな、と眼を白黒させるサガと呆れ顔のクロハラのまえで、ちらりとタカヤナギを盗み見ると、にやにや笑い顔が張り付いていて、満足した。
***
「可愛い着物ですねぇ。派手に登場されたので、どこかの役者さんが来られたのかと思いましたぁ。あ、嫌味じゃないんですよぉ?本当可愛いですぅ」
可愛いらしい顔に笑みを貼り付け、二人分のお茶を差し出すクロハラ。
普段よりも魅力的な笑顔を振りまくサガとは対照的に、クロハラの心は冷たくなっていく。自分より可愛い男が目の前にいて、ちやほやされているのだ。その心中は、推して知るべしだろう。
「いやぁ、今日のソウジさんは本当に可愛いですね。道中すれ違う人達の視線を独占してたのでは?」
「ありがとうございます、撮影のための着物でして。物珍しいようで皆さん振り返ってましたね」
タカヤナギが説明し、ソウジは椅子に軽く腰掛け、ただにこにことサガとクロハラに笑顔を返した。
タカヤナギが、持参した資料をサガとクロハラに渡し、2つのデザインを提案。2人はじっとサガの反応を見ている。
1案目を気に入っていただけた、とソウジは想い、ほっとする。
デザインを初めて見ていただくときはいつも緊張する。
どんなに緻密に打ち合わせをしてあっても、そこにあらわれてくるイメージは、クライアント自身が煮詰めていない場合には、どこへ流れるかわからない不安を抱えている。
今回はサガ自身が作り手であるだけに、ソウジのデザイン画も起こしやすかったと言えるだろう。
タカヤナギの説明が終わり、クロハラが素っ気なく言う。
「これがバレンタイン用のチョコでぇ。こっちがギフト用に包んだ物ですぅ。写真出来上がったら見せて下さいねぇ」
チョコレートのサンプルをクロハラが渡すのを見ながら、ハッとサガが思いついて、ソウジに声をかけた。
「そうだ!宜しければ、撮影用のとは別のを今用意しますので、是非お持ち帰り下さい」
サガはサラサラと流れるようにメモに文字を書き、クロハラに手渡した。
***
サガに奮発した女装男子をご満足いただいたぶんは、ソウジのお気に入りの新作、旧作の詰め合わせチョコレートというおまけになってあらわれた。
クロハラが微かに苛ついた眼で見上げ、タカヤナギに大きな箱の入った、二つの紙袋を差しだした。
紙袋の色は薄いシルバーグレイ。conte de fee のロゴは、特殊インクで印刷されパールが入ったようにキラキラと輝いている。
細部にまで金がかけてある紙袋で、箱の中にはびっしりとチョコレートの小箱が詰め込まれていた。
「はぁい、これ会社の皆様へお土産ですぅ。美味しいんですよぉ。是非皆さんで食べてくださいねぇ」
「はい、ありがとうございます」
タカヤナギは、雌ギツネが、と思いながらにっこりと笑顔で受け取った。
クロハラのニコニコ顔とのあいだに激しい火花が散った。
サガは横で火花を散らす二人を気にもとめずに、眼をハートの形にして、うやうやしくソウジの手を取り左手で下から支えながら、小さなディープブルーの箱を乗せた。
小さな蝶と唐草模様が淡い色であしらわれていて手触りが良く、ソウジの眼がうっとりと吸い寄せられた。
「約束していたチョコレートです。飾っていただけるとおっしゃっていたので…、ケースに入れてみました。あ、防腐剤や変色防止剤が入ってるので、食べないで下さいね?食べたい時には、連絡を下さい。ソウジさんの為だけに作りますから」
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