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BL Land「2014 Valentine」Tour{増刊特集}
憂鬱なクーベルチュール⑦
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公園を行き過ぎると立ち並ぶ木立に埋もれるように、小さな石造りの鳥居があった。
十段程の石段を登って鳥居をくぐると手水舎と、古めかしい木の柱の本殿。
鳥居の脇には向かい合わせのお稲荷さん。手水舎の脇には赤いべべを着たお地蔵さんもひっそりと鎮座し静謐な闇を見守り続けている。
轟音と共にグランドフィナーレを迎えた花火を見送り、どこで別れるのだろう、とぼんやりと考えながら来た時と同じようにぎゅうぎゅうの満員電車に揺られ、改札を、待ち合わせした場所を通り過ぎ、昨日電話を受けた場所からほんのすぐ脇の小径に沿れた所にある小さなお社に来ていた。
カステラの入った袋と氷の容器は捨ててきたのだが、買い与えられたヨーヨーにりんご飴を片手に、なぜか首にはピカチュウのお面。
電車の中ではへしゃげてしまうから、と頭につけさせられ、花火会場にいる間はいいとしてもそこを離れた今の僕の姿はあまりにも滑稽だし、恥ずかしい。
…だから、家までついてきてくれたのかな?それにしても…、よくわからなすぎる。
もともとわかってなどいなかったが、最早さっぱり加賀美の考えていることはわからない。
けれど、誰もいない神社にふたりでいるだけのこの空間はちっとも退屈ではなく、いつ”花火”が花開くのだろう、と待っている自分がおかしくてくすりと笑ってしまった。
「…何?」
「いや、うん。どうしてイキナリ花火だったのかなあ、と思って」
「…きっかけがないと、誘えなかったから」
「前から誘おうと思ってくれてたってこと?」
「うん」
雨だったらどうするつもりだったのだろう、昨日の今日の連絡で必ず行けたかどうかなんてわからなかったのに。
本当におかしな男だ。そしてそれに付き合っている自分も。
「なんでピカチュウなんよ?」
「…目に入ったから」
「じゃあ、隣りのウルトラマンだったかも知れないのか。…キティちゃんじゃないだけマシか」ぶつぶつと呟いていると、
「どうしてもそれが欲しかったんだ」
ピカチュウが?いや、お面が??
思わず首を傾げていたら、首の後ろに回ったピカチュウに手をやりなぜか顔の上に乗せられてしまった。
「…何で?」
ぜんっぜん、わからない。っていうか、加賀美ってこういう奴だったの?!アレコレ唐突すぎね??
そろり、と手を引かれて小さな社務所の脇にふたりで並んで腰掛けた。
1cmしかない覗き穴からは、当然のことながら見える物は闇ばかり。
「ごめん」
どきん、と心臓が跳ねる。突然の拒絶だと、いつも感じる加賀美のそのひと言。
聞きたくはない。でもその意味をもう、聞かない訳にはいかない。
聞かないでいるには十分過ぎる時間が過ぎ、加賀美には伝えねばならない思いがあるからこその今なのだ。
「…何で?顔も見たくないってこと?俺、避けられてたよね?!………ごめんって…何で??」
怖くて声が震える。
今日の意味。突然の部活。そして3ヶ月ぶりの電話。
俺、嫌われるようなこと、あの時何かした??…これってもうおしまい?
ぐるぐるともう何百回、何千回と繰り返した嫌な考えが、また頭の中で膨らみだす。
「俺、木崎の顔見ていられないんだ。あんなことしたし…ごめん」
「え?」
アンナコトって?やっぱり後悔してるっていう意味??
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