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「修弥様、到着いたしましたがどういたしますか?」
車を止めて後部座席のドアを開いた鳴上が手を広げて尋ねてくる。それが意味することはつまりまた抱かれながら行くか、無駄な抵抗はせずに自分で歩くかを選べということだ。
「自分で歩くに決まってるだろ!!」
俺は鳴上の手を振り払って車から降りる。
男に抱かれて運ばれるのは屈辱以外のなにものでもなかった。しかもこれから会うのは俺の宿敵である皇賢斗だ。あんな無様な姿を晒せるわけない。
うちのようなわずか二代しか続いていない成金とは違い、皇家は正真正銘由の緒正しい家柄。俺の家も大きいはずだが、皇家はそれを何倍も上回る豪邸だ。
鳴上がインターホンを押している間、俺はぶつぶつと文句を言い続けていた。
「たっく、なんで俺が執事になんか......」
「そうお思いなら態度をお改めください」
「うるさい!」
「うるさいのはお前だろ。修弥」
たかが執事のくせに遠慮のない物言いをする鳴上に怒鳴れば、開いた門から憎たらしい声が聞こえる。声の方を睨みつければ、俺の嫌いな顔で笑う男が立っていた。
「......ちっ」
「おいおい。一年半ぶりに会うってのに、舌打ちはないんじゃねえの?」
皇賢斗。皇家の長男で跡取り息子。少し癖のある漆黒の髪を揺らすこいつは、俺より一つ年上で、幼い頃から全てにおいて完璧だった。俺がどれほどハイスペックでも、上には上がいるのだとなんど思い知らされたことか。
「俺が高校入ってからなんの連絡もよこさないで、どういうつもりだよ?」
一ノ瀬家と皇家ではやはり家柄が違うのだと周りの人間から陰口を言われていたなんてこいつは微塵も知らないのだろう。そのことに嫌気がさしてわざわざこいつと違う高校を選んだことも、こいつはきっと知らない。
「別にどうでもいいだろ。お前には関係ない」
「お前なぁ......」
賢斗が俺に詰め寄ろうとしたとこで鳴上が一歩前へ出る。そして頭を垂れた。
「賢斗様、ご無沙汰しております。本日は無理な提案を承諾してくださりありがとうございました」
「ああ。鳴上さん、お久しぶりです。こちらこそありがとうございます。おかげ様でこのバカ修弥に会うことが出来ました」
「はぁ!?誰がバカだよ!?ふざけんな!!」
「あ?バカだろ。携帯番号も変えやがってこのバカ」
「......っ。誰のせいで!」
この俺に何度もバカ呼ばわりをする賢斗に掴みかかろうとすれば、鳴上が俺の腕を引く。俺はそれを解こうと力を込めたけれど、執事兼護衛係の鳴上に力で勝てるわけはなかった。
「離せ、鳴上!こいつ一回殴らなきゃ気が済まない!」
「修弥様、お慎みください。賢斗様は今よりあなた様の主人となられるお方です」
「......っ」
ここで心を改めなければ一ノ瀬の家には帰れない。それが分かっている俺はなんとか言葉を飲み込んで睨みつけるだけにとどめる。
目が合った賢斗は、それはそれは愉快そうに口端をつり上げた。
「よろしくな。新人執事さん」
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