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「え......?なにが......」
なぜ見合い相手がそんなことを言うのかと疑問に思い振り返れば、女は俺の手をガシッと握ってきた。
「分かっています。主人と執事の関係じゃ不満ですよね。分かります」
「は......?」
いきなり人の手を握って「分かります」をくり返す見合い相手に俺は戸惑いを隠せない。つまりは俺の正体がバレているということだろうか。
「えっと......俺のこと知ってるんですか?」
苦手なはずの敬語が自然と出て来るほど俺は動揺していた。そんな俺に女は力強く頷く。
「はい。存じております」
「あ......えっと......」
別にこの人にばれても問題はないが、一応口止めはした方が良いのだろうか?とかいろんなことを考えたが、相手は俺の想像を上回ることを言ってきた。
「身分を越えて......とても素敵です。私、応援していますから」
「え?あ......はい......?」
俺がそう返事をすると、女はにこりと笑って頷く。そして振り返って、賢斗に向かって一礼をした。
「では、邪魔者はこれで」
「美玲さん、あの......」
「賢斗さん。本日はありがとうございました。......嫌われてなんかないじゃないですか。頑張ってくださいね」
「......ありがとうございます」
苦笑いをした賢斗は頭を下げ、女は帰っていった。しばらくの沈黙の後に、今度は凌真が口を開く。
「じゃー、俺も帰るわー。行くよ、瑞希」
「え!?で、でも......」
「いいからいいから」
戸惑う瑞希を凌真が強引に引っ張って行って、その場に残されたのは、賢斗と俺の二人だけ。
気まずい雰囲気が流れるなかで、賢斗が部屋を指差す。
「立ち話もなんだし......とりあえず座るか?」
「......うん」
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