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「うっ......ううっ.....,」
人通りのない廊下で泣き声の元へ近づくと、瑞希が壁に背を預けて体育座りをしていた。
膝に埋めた顔は見えないけど、きっとすごくぐちゃぐちゃに泣いているのだろう。
「瑞希」
「ぅ......っ、しゅう、や?」
俺も瑞希の隣に腰を下ろしたけど、こんなときなんと言えば良いのか分からない。
とりあえず、瑞希も今は話せないだろうし、泣き止むまで黙っていることにした。
数分して落ち着いた瑞希が、鼻をすすりながら話しかけてくる。
「......ごめんね。迷惑かけて」
「別に。瑞希はあいつがこの学校にいるの知ってたんだろ?俺こそ無理やり誘って悪かった」
「ううん。ちゃんと言わなかった僕が悪いし、誘ってくれたのは本当に嬉しかったよ」
「......嫌いだから逃げたのか?」
俺にとっては最低野郎でも、瑞希がどう思ってるか分からない。失言をしないように瑞希の気持ちを確認しようとそう聞けば、瑞希は静かに首を横に振る。
「違う。違うよ。嫌いなんかじゃない......嫌いになれるわけないよ」
「そうか」
「でも、怖くて。手に指輪してたらどうしよって、僕のこと忘れてたらどうしよって、怖いことばかり考えちゃって、逃げちゃった」
「......」
「もう一年半も経ってるのに、気持ちが変わってなかった自分も怖い。ご主人様が婚約者さまと話していたとき、僕の気持ちは叶わないって分かったはずなのに」
「......これはさ俺の憶測だけど、それって勘違いってことないのか?」
俺の見た限り、高杉は指輪なんかしてないし、大事な相手がいるように見えた。大人は我慢しなきゃって、悲しそうだったのを覚えている。
それってきっと瑞希のことだろ?
「......?」
「だって、話を聞く限り、俺はあいつのことゲスな大人だって思うけど、お前にとっては違うんだろ?お前が人を見る目がないとも思えないし......そんな酷いこと本当にしたのか?」
「それは......でも、本当に見て......」
「ちゃんと本人に聞いたのか?」
「ううん......これ以上ご主人様を煩わせちゃいけないって思って、黙って出てきたから」
「なら、せっかく会えたんだし、ちゃんと聞いてみろよ。それで本当にゲス野郎だったら、あいつがここを辞めさせられるように、俺がとことん追い込んでやるから」
ちゃんと本人に聞かなきゃ、分からないことがあるって、俺も賢斗のことで痛いほど知った。
賢斗は俺のこと想ってくれてたのに、俺は勝手に勘違いして、傷ついて、怒って、避けた。
あの時間がどんなに無駄だったか。あの時間があったらもっと賢斗と一緒にいれたのに、本当にもったいないことをしたと悔やまれる。
「瑞希が俺に優しかったみたいに、今度は俺が瑞希の味方だから。この俺がお前の味方になってやるって言ってるんだから、安心して行ってこいよ」
俺が瑞希の背中を叩くと、瑞希は笑いを漏らして、「修弥らしいや」って呟いた。
「......うん。ありがとう、修弥。でも、酷いことはやめてね?」
「ふん。高杉のやついつも俺のことガキガキ言いやがって、もともとむかつくと思ってたんだ。さっきの瑞希を見つけたときのあの顔、見ものだったな」
「ふふ。もう、修弥ったら」
やっぱり瑞希は笑顔が一番似合ってる。
涙を拭いて笑う瑞希を見てそう思った。
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