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「修弥様。お目覚めください」
「ん......うう......」
文化祭から二週間ほどたった土曜日。
眩しい光と鳴上の声で今日も始まる。
ちなみに、あれからの瑞希は、賢斗に恩があるということで基本この屋敷で働いて、土曜の夜から月曜の朝まで高杉の家に出張することになった。
だからきっと今日は、一日中そわそわしてるだろう。
「ふぁあ......」
俺はまだ寝ぼけた頭で、準備をするべく起き上がる。
昨日は賢斗が仕事で家を空けていて早く寝たから、ずいぶん長いこと寝ていた気がする。
顔を洗って、服を着替え終わると、鳴上が目の前へ小さな箱を持ってきて、片膝をついた。
箱を差し出す鳴上に、俺は首を傾げる。
「何?」
「お誕生日おめでとうございます」
「え?」
「どうぞお納めください」
9月29日。
そういえば、今日は自分の誕生日だった。
......すっかり忘れてた。
「あ、ありがとう......」
箱を受け取り、開けてみれば、キラリと光るピンが入っていた。
「......これ、ネクタイピン?」
「はい。以前、修弥様がご興味を示されていたので」
そういえば、鳴上のタイピンは綺麗で品があって、鳴上によく似合っていたから、褒めたことがあったかも知れない。
「でもこれ、鳴上と同じのなんじゃ......」
「......はい。もしお気に召さないのであれば、他のものを用意致しますが......」
「いや!これでいい!」
「......さようですか」
正しくは、これがいい、だ。
完璧な鳴上と同じものを付けるなんて、自分も出来る執事になったみたいだ。
まあ、たかが物でそんなこと思うなんて、情けないけど。
「これ、どこらへんにつけんの?」
「お付け致します」
鳴上がピンを受け取り、慣れた様子で俺のネクタイに付ける。
その様子を見ながら、相変わらず澄ました顔してるな、なんて思っていたら、勢いよくドアが開いた。
「おいこら修弥。何で昨日から電話に出ねえんだよ」
この部屋のドアを勝手に開けるなんて、賢斗か凌真しかいない。
声を聞いて賢斗だと確信した俺は、ドアに目を向けてため息をつく。
「勝手に開けるなよ」
俺だけならまだしも、この部屋は鳴上の部屋でもある。だから注意したのに、賢斗は全く聞いている様子でなく、逆に質問してきた。
「......何してんだ」
「何って、鳴上からプレゼントもらっただけだけど」
そう言ったら、なぜか賢斗の眉毛がぴくりと動いた。
......?意味分かんない。
タイピンを付け終えた鳴上が賢斗に向かって頭を下げる。
「賢斗様、お帰りまさいませ」
「ああ......どうも」
「一旦お休みになられますか?もし、お食事を取られるのでしたら、早急に用意致しますが」
なんか、鳴上も機嫌悪い?
いつも通りの丁寧な所作と言葉と、無表情だけど、なんか棘がある気がする。
「......いえ、今日は出かけるので、修弥と」
賢斗のその言葉に俺は首を傾げる。
「え、そんなの聞いてない。ていうか、帰ったばかりなんだろ?少しくらい休んだ方が......」
「いいから、私服に着替えとけ」
「は?俺の仕事は?」
出かけるって言っても、執事としての付き添いだと思ったのに、私服ということは違うらしい。
「今日は休みにしてやる」
「いや、そんな急に言われても、やることあるし」
あまりに自分勝手な物言いにムッとしてしまい、用意を済まそうと眼鏡を手に取る。
その眼鏡をかけようとしたところで、俺の手は賢斗に掴まれた。
「村上には言ってあるし、さっき瑞希にも言っておいた。お前の分もやってくれるってよ」
「はあ?そんな勝手に......」
「勝手じゃない。今日は......特別な日だろ」
「そ、れは、そうかもだけど......」
けど、誕生日ごときで仕事を休めるわけないし、そんな中途半端なことしたくない。
俺は鳴上にヘルプを求めるように視線を向けた。
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