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修弥様がお出かけになってから、まだ仕事まで時間があったので、自分のベッドに座りながら、修弥様にお渡ししたネクタイピンを眺めていた。
こんな物をお渡しして、どういうつもりなのかと自分で呆れる。
自分はあくまでも執事で、それ以上の関係は望んではいけないと、そう思っているし、これからもそれは変わらない。
まだ高校生で主人である修弥様に恋い焦がれているなんて、誰にも気付かれないようにしていたのに、聡明な賢斗様はなんとなくお気づきなのだろう。
あからさまな挑発に乗って、自らも挑発を仕返すなんて、本当にどうしようもない。
執事失格だ。
「修弥様......」
だからこのキスは自分だけの秘密。
そう思って、ネクタイピンに口づけをしたが......
「へー、鳴上さんもそういうことするんだー。いがーい」
「......っ。凌真様......」
いつの間に入ってきたのだろう。
凌真様がドアに背を預けて、にやにやと私を見つめてくる。
賢斗様といい凌真様といい、ドアをノックするという常識をご存知ないのだろうか。
「何それ?修弥へのプレゼント?」
「これは......」
正直、ものすごく動揺している。
非常にまずいところを見られてしまったと、自覚しているからだ。
「ぷっ。鳴上さん焦ってるー?今日は意外な鳴上さんが見れて、楽しいなー」
どんどん距離を縮められ、ついにはベッドへ押し倒されてしまった。
まだあどけなさが残るお顔が、私をじっと見つめる。
「ねえ......抱いてー?」
「......先日もお断りしたはずです。それに、凌真様ももうしないとおっしゃったではないですか」
「もうしないよ。鳴上さんとしか」
「......」
「抱いてくれるだけで良いんだよ?好きになってなんて言わないし......俺も鳴上さんのこと好きにならない」
俺は家を継ぐからその前に、と凌真様は自嘲的に笑う。
「......後継者は賢斗様のはずです」
「そうだよー。今のところはねー。でも、兄貴は別に継ぐことに固執してないし、次に父さんと母さんが帰国したら、俺が継ぎたいって言うつもり。......だからそれまでは、良いでしょ?」
「凌真様......」
「本当はさ、嫌なんだよ。普通に女の子が好きになりたいし、女の子と結婚したい。俺は修弥と兄貴みたいに自分を貫き通す覚悟を持ってないから......普通と違うのは嫌だ」
いつも無気力な凌真様がこんなに喋るなんて珍しい。
珍しくて、痛々しい。
このお方を救ってあげたいなんて、無責任なことを少しだけ考える自分がいた。
「だから継ぐの。自分から逃げるために継ぐの」
だって、自分も現実から逃げたいと思ってしまっている。
修弥様から逃げたいと、そう思ってしまっている。
「私は......」
その先の言葉が出ない。
私はどうしたい。何がしたい。
そんなことは永らく言っていない。何よりも修弥様が優先だったから。
「鳴上さんだって辛いでしょ?一回だけで良い。一回だけで良いから、付き合ってよ」
「私は、......」
「お願い。鳴上さん」
私はいったい、どうすれば良いのだろうか。
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