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数十分で賢斗が料理を運んできた。
「イ、イタリアン......」
テーブルには、前菜からパスタ、肉のメインディッシュ、そしてご丁寧にロウソクがたったケーキまでが並ぶ。いわゆるフルコースだ。
「ん?イタリア料理、嫌いだったか?」
「いや......好き。けど、こんな短時間で多くないか?」
ゆっくり二時間かけて食べるものが、一気に出てきて目を疑う。
「そうか?野菜は盛り付けるだけだし、普通だろ。仕込んでたものもあるし」
「普通じゃないだろ」
完璧に料理をした賢斗にまたもや敵対心を出してしまう。
さっきはつい変なことを言って賢斗のことを止めようとしたけど、俺は料理が特別出来る訳ではない。簡単なのは多分出来るが、ここまで本格的なのはきっと無理だろう。
......悔しい。
誕生日を祝ってもらってるのに、そんなことを思うなんて悪いのは分かってる。
分かっているけど、こればかりはどうしようもない。ずっとそうだったんだ。
そんな俺に、賢斗は気分を害した様子もなく、笑いながら頭を撫でてくる。
「ははっ。そんな怖い顔すんなよ。そんなに悔しいなら、今度は一緒に作るか」
「ふん。絶対俺の方が美味く作ってやる」
「修弥の手作り料理か......いいな」
そう言って、賢斗はやっぱり楽しそうに笑う。
それでまた惨めな気分になった俺は、ボソッと呟いた。
「......意味わからない」
「ん?」
「だって俺......めんどくさい」
すぐ対抗したくなって、勝てなくて拗ねる。
俺が賢斗だったら、俺みたいなやつは嫌だ。めんどくさくて、うざいって思う。いい加減にしろって思う。
なのに賢斗は笑ってくれる。そばにいてくれる。
「いつも言ってるだろ。可愛いって」
「でも......」
「お前がそんな風になるの俺だけだろ。だから良い」
そう言って、賢斗は俺の頬に手をあてる。
「なんなら、今からその身体に教えてやろうか?俺がそのままのお前のこと、ずげえ好きだってこと」
その声と顔がすごく甘くて、胸がぎゅっとする。
こんなにクサくて寒い台詞を言われているのに、なぜか泣きたくなった。
「......っ。......お腹すいた」
泣かないように強がって賢斗を振り払う。
先に席につけば、賢斗が「そうだな」って言って向かいに座った。
怒ってないかと顔色を伺おうとすると、目が合って、柔らかく微笑まれる。
「誕生日おめでとう、修弥」
最初はしんみりしてしまったけど、賢斗が俺をからかって、俺がそれに怒って、すぐにいつも通りに戻った。
ノンアルコールのシャンパンを二人で開けて、賢斗が作ってくれた料理を食べる。
すごく、すごく悔しいけど、今まで食べた中で一番美味しくて、すごく幸せな食事だった。
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