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一年半くらい前のこと。
「何度も申しておりますが、修弥様はお出かけになっております」
「そんな毎回毎回出かけてるわけないじゃないですか。いい加減にしてください」
修弥が俺の前からいなくなってから、何度か一ノ瀬の家に通った。
けど本人とは会えなくて、いつも鳴上さんに対応されていた。
「恐れ多いことですが、それはこちらの台詞です」
「はい?」
「なぜ修弥様があなたを避けているか、ご存知ですか?」
「それは、あいつが負けず嫌いだから」
「いいえ。違います。修弥様は毎日のようにあなたと比べられて、それでも関係ないとずっと過ごしておりました。しかし、傷付いていないわけがない」
「けど、勝手に言ってくるやつはほっておけばいい。俺から離れる理由にはならない」
「その傷を耐えきれなくさせたのはあなた自身です。あなたの心無きお言葉が、修弥様に限界を迎えさせてしまった」
「な.......」
「たとえ他に本意が別にあったとしても、伝わらなければ意味がない.......違いますか?」
「......っ」
そこで俺は気が付いたんだ。
自分がどれだけ自分勝手な人間か。
修弥が周りから悪く言われていることを、どこかホッとしていたんだ。
これで俺から離れないって。
そうやって修弥の心に気がつかないふりをして、俺にだけ向けるあの目を心地いいと思ってしまった。
「......どうすれば良いんですか」
どうしたって俺は修弥が好きで、独り占めしたいって思う。
でも、それじゃあきっと、修弥は俺のところに戻ってこない。
そう思って、つい問いかけた言葉に、鳴上さんは応えない。
「......とにかく、今はまだお二人を会わせられません」
「そんなのいつまでっ......」
「お引き取りください」
強制的に門を閉められ、顔を上げるとカーテンが勢いよく閉まったのが見えた。
......あそこに修弥がいるのに、顔も見れないなんて。
修弥はどんな気持ちで俺のことを見ているんだろう。
早く帰れ二度とくるなって思っているのだとしたら、と思うと胸が痛んだ。
それから俺は少しだけ荒れた。
寂しくて、虚しくて仕方がないときは、人肌を求めた。
けど、どんなときでも思い浮かべるのは修弥の顔で。
その度に胸が苦しくて、そのうち遊ぶことも億劫になった。
ただただ、修弥の顔が見たい。
俺に名前を呼ぶあの声を聞きたい。
触り心地の良いあの髪に触れたい。
「修弥......好きだ、修弥」
会いたい。
会うためには、自分が変わらなければ。
修弥を守れる男になって、俺はまたあいつと......そうして俺は勉学と仕事に励んだ。
また会ったときに失望されないように、また追いかけてもらえるようにって。
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