アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
131
-
*
「修弥くん。久しぶりねえ」
「ひ、久しぶり、です」
「あら?敬語も使えるようになっちゃって。立派になったわぁ」
皇の屋敷に戻って、昼すぎに賢斗の両親が帰って来た。
俺の前で座っておっとり話しているのが、母親の美咲さん。
「それで、話とはなんだ?」
賢斗と凌真と向かい合って座っているのが、父親の宗太郎さんだ。美咲さんとは対照的に、宗太郎さんは厳格な人で、眉間にしわを寄せて腕を組んでいる。
ここはと言うと、二人の自室で、賢斗と凌真が話があるというから集まった。
......なぜか俺まで。
宗太郎さんの問いに答えるのは賢斗だ。
「俺は家を出ようと思う」
!?
声を出さなかっただけ偉いと思う。
それほど驚くことだった。
賢斗の言葉に、凌真は額に一筋の汗を流し、美咲さんは「あらあら」と頬に手を当てた。
そして、宗太郎さんは眉間のしわを一層深くする。
「何を言っている。お前はこの家の長男で跡取りだ。そんなことは許されない」
「跡取りなら凌真がやりたいって言っている」
「.....本当か、凌真」
「う、うん。俺が継ぎたい」
凌真の口調はいつもみたいにけだるげじゃなくて、本気なんだと伝わる。
「ならまずは理由を言いなさい。何故いきなり継ぎたいと思ったんだ」
「......それは......」
なかなか理由を言わない凌真。
宗太郎さんはそんな凌真にしびれを切らして、賢斗の方へ目を向けた。
「賢斗、お前はどうなんだ」
「俺が出て行く理由は、修弥と一緒になるためだ」
いきなりのカミングアウト。
俺との関係を賢斗の両親に知られてしまった。
心臓がバクバクと不快なほどうるさい。
俺と賢斗は男同士で、こんなのは普通じゃない。宗太郎さんもきっとそう思うはずだ。
けど、宗太郎さんが口にしたのは、違うことだった。
「......そのために、弟を売るのか」
賢斗はそんなことしない。父親なのに賢斗のことを疑うのかと思うと、頭に血が上った。
俺が立ち上がろうとすると、美咲さんが首を振ってそれを制止する。
その間に口を開いたのは凌真だ。
「それは違う!俺が継ぎたいって言ったから、兄貴は譲ってくれようと......」
「じゃあ何故、お前は継ぎたいと思った。生半可な気持ちでは、後は任せられない」
「......っ」
そう言われれば、凌真はまた黙ってしまった。
そんな凌真に、宗太郎さんがため息をつく。
「......何にせよ、お前たちはまだ高校生だ。賢斗に家を出て行かせるわけにはいかない」
「じゃあ、卒業したらいいのか?」
「いいわけがないだろう。今まで通り、この家の跡取りは賢斗だ」
「父さんっ」
「とにかくもう話すことはない。私は認めない。この話はこれで終わりだ......一ノ瀬の息子」
強引に話を終わらせた宗太郎さんが俺を呼ぶ。
あまりにも鋭い目つきに、俺は肩をびくっと反応させてしまう。
「は、はい」
「お前は家に帰ってもらう。今後一切、この家の出入りも禁止だ。賢斗とは二度と会わせない」
まるで頭を打ち付けられたかのように、目の前が歪んだ気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
131 / 185