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車が発進して、我を取り戻す。
「やだ!帰りたくない!止まれ鳴上!!」
「......」
「鳴上!!!」
何度訴えても、鳴上は車を止めてくれない。
何で、何で、みんな俺と賢斗を引き離そうとする?
唇をぎゅうっと噛み締めると、隣に座っている賢斗が俺の頭を小突く。
「ちょっと落ち着け、修弥」
「何でだよ!お前は俺と離れてもいいのかよ!」
「修弥」
「俺は絶対に嫌だ!もう賢斗と離れたくない!」
嫌だ。
もう気付いてしまったんだ。賢斗のことがずっと好きだったんだって。
やっと気付けて、一緒にいようって決めたのに、何で......。
「やだ、いなくなっちゃやだ......!」
「修弥、話を聞け」
「別れ話なら聞かない!」
「修弥」
「触るなっ!」
振り払うと、賢斗の腕に指輪の部分が当たってしまう。
もらったときはすごく嬉しかったはずなのに、今はそれがすごく悲しい。
もう感情を止めることは出来なくて、俺は叫び続ける。
「嫌だ!嫌だ!離れたくない!!」
「修弥」
「......っ」
ぎゅうっと抱きしめられて、言葉を失う。
振り払おうにも、力じゃ敵わなくて、抵抗出来ない。
こういうときに抱きしめるなんて、こいつはなんてずるい男なのだろう。
「俺は皇の家に従うつもりはない。せっかく凌真がくれたチャンスだ。無駄にはしない」
「......じゃあ」
「けどな、今までの責任があるから、今すぐってわけにもいかねえんだ。今持ってる仕事を区切りつけて、凌真に完全に引き継ぎするまで、待ってて欲しい」
「......それって、どれくらいなんだよ」
聞いた俺の質問に賢斗は答えなかった。
ただただ微笑んで、俺の頭を撫で続ける。
「......絶対に迎えに行くから。待っててくれ」
「......」
「好きだ、修弥。愛してる」
「......っ」
「好きだ......」
「そういうとこっ、ほんと、ずるいっ......!」
必死に堪えていた涙が、頬を伝う。
会えないのは怖い。離れたくない。
「早く来ないとっ......ううっ、お前なんかっ、忘れてやるからっ」
「ああ。......すぐ行くから」
賢斗はもう一度「愛してる」って言って、俺に最後のキスをした。
甘くて、悲しいキスだった。
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