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「修弥!」
家に着くと、外で母さんが待っていた。
まさかあの忙しい母さんが、こんな時間にいるなんて思っていなくて驚く。
「母さん......?」
俺たちが車から降りると、寄って来た母さんが俺の手を引いて、賢斗から遠ざけた。
俺と賢斗の間に立った母さんが、賢斗に話しかける。
「賢斗くん、久しぶりね」
「......お久しぶりです」
「鳴上くん、少し賢斗くんと話したいから、修弥と中に入っていてくれる?」
「かしこまりました」
母さんに頭を下げた鳴上が俺の手を取る。
「参りましょう、修弥様」
「や......」
まだ離れたくない。
少しでも、一秒でも長く、賢斗と一緒にいたい。
けど、賢斗が「またな」って笑顔で手を振るから、何も言えなかった。
そのまま鳴上に手を引かれ、家に入った。久しぶりの家なのに、何も感じない。
ただ思うのは、
笑い返してやれば良かった。
ということだけだ。
けど、俺には無理だ。
賢斗と、大事な人と別れるのに、笑顔でさよならするなんて、俺には無理だ。
だって俺は、こんなにも弱くて無力なんだから。
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