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静かな車の中、助手席に座った俺は、鳴上さんに話しかける。
「あの、鳴上さん」
「なんでしょう」
涼しげな表情で尋ねてくる鳴上さんに、俺は重たい口を開く。
「俺がいない間、修弥のこと頼みます」
本当は修弥のことは全部俺が守ってやりたい。
けど、どうしようもなくて、結局鳴上さんを頼るしかない。
「......私の気持ちはご存知かと思いますが?」
修弥のことを想う鳴上さんにこんなことを言うのは、都合がいいとも思うし、情けないとも思う。
けど.......
「こんなこと頼めるの、鳴上さんしかいねえから」
俺がそう言っても、鳴上さんは顔色一つ変えない。
修弥は俺のことを完璧だと思っているようだけど、本当に完璧な人間は、鳴上さんのような人なのだと思う。
「.....もちろん、私は私なりに修弥様のことをお支えするつもりです。どうなるか保証は致しません」
「それで良いです。もしあいつが鳴上さんのこと選んだとしても......」
俺がいない間に、二人の間に何かが生まれるかもしれない。
修弥は鳴上さんのことを信用している。
だから、その先に進んでしまったとしても、おかしいことではないし、俺にそれを責める権利はない。
けど......それでも俺は.......
「絶対に取り返しに行きますから」
俺がはっきりとそう口にすると、鳴上さんは軽く息を吐いた。
「本当にどうしようもない......あなた方兄弟は」
「え?」
声が小さすぎて聞き返すと、鳴上さんは「いえ」と続ける。
「修弥様のこと、かしこまりました」
「......ありがとうございます」
そこからは一言も会話はなかった。
本当は修弥が他の誰かとなんて、反吐がでるほど嫌だ。
怖くて怖くて、気が狂いそうになる。
けど、修弥が寂しい思いをするのは嫌だから。
だからどうか、また会った時は、笑顔を見せてくれるように。
そう願う。
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