アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
139
-
*
最初の一年は健気に待った。
けど賢斗は全然来なくて、心配で不安で、調べて調べて、やっと情報を得たのは二年を過ぎてしばらく経った頃。
あいつは海外へ行った、らしい。
賢斗がそれまで任されていたのは国内の仕事だった。だから海外へ行くということは、引き継ぎなんかじゃなくて、新しい仕事なのだろう。
つまり賢斗は俺よりも家を選んだということだ。
賢斗を責めることはできない。
人の気持ちは変わるものだし、別れたあの日に最悪の事態も少なからず覚悟していた。
けど頭ではそう思っても、実際簡単に割り切れるものではなくて、俺はみっともなく荒れた。
賢斗に教えてもらったことを他の人間と何回もした。
賢斗のせいで変わってしまった自分の身体を慰めるにはそうするしかなかった。
そうでないと不安で不安で仕方がなかった。
そんな捨て身な俺を助けてくれたのが、鳴上だ。
俺が家を抜け出しても、何度も何度も迎えに来て。
俺が涙を流したときには、ずっと寄り添ってくれた。
けど当時の俺は荒れていたから、いつも鳴上に怒鳴ってばかりだった。
『いい加減、放っておけば良いだろ!!毎回毎回うるさいんだよ!!』
『......しかし』
『もうやだ!!何でこの俺がこんなに苦しくならなきゃいけないんだよ!』
『修弥様.......まだ賢斗様が約束を放棄なさったとは......』
『破ったに決まってるだろ!もう何年も経ってるし、あいつは海外に行ったんだぞ!?』
鳴上は悪くないのにいつも八つ当たりして、酷い言葉をたくさん言っても、鳴上は俺を見捨てなかった。
『何でそんなに俺に尽くすわけ?こんな俺なんか、そんな価値ないだろ。遠慮しないで、お前もあいつみたいに俺の前からいなくなれば良い』
『......それはお断りいたします』
『だから何でっ!』
『修弥様のことをお慕いしているからです』
『......は?』
『......お伝えするつもりはなかったのですが、理由が無いとあなたのそばにいられないのなら、仕方ありません。私はあなたのことを昔からお慕いしておりました』
『なっ......!』
意味がわからなかった。
ずっと一緒にいて、いきなりこんなあっさり暴露されても頭が追いつかない。
言葉を失う俺に、鳴上は言葉を続ける。
『気になさらないでください。ただお仕えすることを許していただくだけで、私は......』
気がつけば俺は、無意識に鳴上へ手を伸ばしていた。
ネクタイを引っ張って、前のめりになった鳴上と唇を重ねる。
『......ん......』
『修弥、様......?』
驚く鳴上にぎゅうっと抱きつく。
『鳴上......』
『......っ、駄目です、修弥様』
『やだ。これからはお前だけにするから......だから......』
『......っ』
その後は、お互い何を話すでもなく身体を重ねた。
こんなんじゃ、賢斗のことを忘れるために鳴上を利用したようなものだけど、決して生半可な気持ちではない。
鳴上なら好きになれると思ったから、そうした。
思った通り、今すごく幸せだ。
鳴上と一緒にいると心が落ち着いて、好きなんだと実感する。
だって、朝起きたときに隣にいるだけでこんなに心が穏やかになる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
139 / 185