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「ただいまー」
今日は久しぶりに家族での食事。
もう両親は家に帰って来ているだろう。
「修弥!修弥!」
「どうしたの、母さん」
帰るなり母さんがすぐに出て来て出迎えてくれる。
珍しいことがあったもんだと、首を傾げれば、母さんが俺の腕を掴んで引っ張った。
「いいから、早く来なさい!」
「......?」
鳴上と顔を見合わせて、母さんに連れて行かれれば、信じられない光景が目に入った。
廊下の向こうから歩いてくる人物がいる。
「え......」
「良かったわね、修弥」
「いや......え」
もう何が起きているのか分からない。
歩いて来た男が俺の前で止まる。
「修弥」
ずっと呼んで欲しかった。
待って待って待ち望んで、諦めた声が今ここにある。
少し背が伸びたかもしれない。
髪型は変わらないけど、前よりもさらに大人びている。
かっこよくて、頼もしくて、やっぱり完璧なその姿。
「賢斗様......」
俺は声なんか出なくて、鳴上の声で我に返った。
「修弥、久しぶり。会いたかった」
そう言って抱きしめられて胸が痛くなって、俺は賢斗をはねのける。
「.......だよ」
「修弥......?」
「今さら何しに来たんだよ!」
待っても来なかった。
俺を捨てて海外に行って、今さら迎えに来たって受け入れられない。
「俺はもう、お前のことなんか忘れたのに!!」
めいいっぱい叫んで、俺は逃げた。
涙が出て来て止まらない。
胸が苦しくてたまらない。
ああ、神様。
どうして人生はこんなにも上手くいかないのか。
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