アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
151
-
*
「修弥様」
家のあまり使われない階段付近に、賢斗を呼んだ。
呼ばれて振り返れば、作り笑いの賢斗が立っている。
「茶化すな。俺は執事には用はない」
睨みをきかせてそう言えば、賢斗は肩をすくめて、元の調子に戻った。
「何だよ。どうせなら部屋に呼んでくれればいいのに」
「それがダメだってことは俺でも分かる」
「......そーかよ」
苦しそうに顔を背けた賢斗に胸が痛む。
けど、これからもっと傷付けることになる。
俺は手を握りしめて、声を絞り出した。
「ごめん」
「......何が?」
「俺、賢斗のこと待てなかった。賢斗はちゃんと来てくれたのに......裏切った」
「......俺はそんなの気にしない。置いてった俺が悪い」
「でも......」
「過去よりこれからだろ。俺は修弥が俺のところに戻って来てくれれば、それで良い」
嬉しい。嬉しいけど、嬉しくなっちゃ駄目だ。
俺にはそんな権利ない。
泣きそうだけど、泣いたら絶対駄目だから、一回唇を噛んで心を落ち着ける。
そんなんで落ち着くわけないって思ってても、無意識にそうしていた。
「......もう賢斗の気持ちには応えられない」
そう言えば、賢斗は腕を掴んでくる。
「修弥、俺はまだ諦められない。この六年、お前と会うことだけを考えてた」
「やだ、離せ......!」
振りほどこうにも力が強くて出来ない。
「修弥、好きだ。好きなんだ」
嫌だ。これ以上その言葉を聞きたくない。
俺は賢斗から逃れるために、多分賢斗が一番傷つくであろう言葉を口にしようとした。
「けど、俺は鳴上のことが......っ」
好き。
そう言おうとした口は、賢斗の唇で塞がれてしまった。
「んっ、んんっ......んっ、や、やめ」
「それだけは、言わせねえ......」
「ん......んっ......やぁっ......」
俺が抵抗できなくなるくらい深く熱く、賢斗の舌が俺のそれを絡め取る。
六年越しのキスは、とても、とても、悲しい味がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
151 / 185