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「......責任があったから。っていうのも嘘じゃない。けど、お前に寂しい思いをさせたくなかったてのが、本心だな」
「......?」
ますます分からなくなってきた。
俺はすごく寂しい思いをした。
俺にそうさせた本人が何を言っているのか。
意味が分からないのが不愉快で、また睨むと、賢斗が再び口を開いた。
「俺は修弥のこと、一生好きでいる自信がある。けど、修弥の気持ちは分からないだろ。駆け落ちでもして、もし万が一駄目になったら......修弥の帰るところがなくなる」
「そんなことあるはずないだろ!!俺はあの時、本気だったのに!!」
自分の気持ちが軽んじられて、俺はすごく惨めな気持ちになった。
けど、そんな俺に賢斗は首を横に振る。
「違う。そうじゃない。お前が絶対に寂しい思いすると思ったんだよ」
「はあ?」
「ご両親、鳴上さん、凌真や瑞希。それ全部捨てて俺と来たって、お前はいつか寂しさにやられる。俺じゃ全部は満たせない」
「......そんなこと、」
ない。
と、はっきり言えなかった。
俺は父さんと母さんが好きだ。
仕事が忙しくて一緒にいる時間が少なくても嫌だったのに、縁を切るなんてこと耐えられそうにない。
そして、両親と一緒に過ごせない寂しさを和らげてくれていたのは、鳴上だ。
鳴上は絶対俺のそばにいたから、ずっと安心できた。
凌真や瑞希と過ごす時間もかけがえのないものだった。
それら全部を捨てる覚悟なんて、俺に持てるはずもない。
そんな状態で一緒に駆け落ちしたって、情緒不安定になるのは目に見えている。
だから、賢斗の言うことは図星で、俺のことをよく分かっている決断だったのだろう。
俺の幸せを、帰る場所を守るための決断。
けど、けど......俺は、どうしても、賢斗が好きだった。
いっときの感情だったとしても、全てを投げ打ってでも一緒にいたかった。
だけど、自分を犠牲にしてでも俺の幸せを守ろうとしてくれた賢斗が、どうしようもなく愛おして、苦しい。
もう我慢できない。
押し込めた感情が、外へと流れでていく。
「......賢斗、賢斗、賢斗」
俺は賢斗のことを確かめるように、何度も名前を呼んだ。
「賢斗、好き。好き......大好き」
駄目なのに。こんな言葉、絶対に駄目なのに。
口が勝手に、その言葉を紡ぐ。
俺はみっともなく涙を流して、賢斗にすがりついた。
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