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「鳴上さん?」
つい思い馳せてしまい、凌真様が顔を覗き込む。
「これは......申し訳ありません」
人様といるときに、別のことを考え込んでしまうだなんて、失礼きわまりないので、頭を下げる。
すると凌真様は、ゆっくり首を振った。
「いや、いいよー。どうせ修弥のことでしょ?」
「......」
「ま、病室、戻ろっかー」
「......はい」
二人で病室に戻る最中は話はしなかった。
けれど、もう少しで賢斗様の病室に着くというときに、前を歩いていた凌真様が振り返った。
「鳴上さん」
「はい。なんでしょう」
真面目な顔をした凌真様に首を傾げると、凌真様は言葉を続けた。
「......鳴上さんはさ、自分の幸せよりも修弥の幸せを選んじゃうんだろうけど......それでも俺は、鳴上さんに幸せになってもらいたかったよ」
いつものいい加減な物言いとはちがって、しっかりとした口調でおっしゃる凌真様。
私のことを思ってかけてくださった言葉に、胸が暖かくなるのを感じた。
凌真様も私の存在を肯定してくださる人のなかの一人なのだ。
「ありがとうございます......ですが、私は幸せですよ。これ以上望めば、バチが当たるくらいです」
私はいったいどんな表情で言ったのだろうか。
一瞬驚いた様子を見せた凌真様が、今度は微笑みを浮かべた。
「そっか」
私は何も変わらない。
いつだって、一番に修弥様のことを大切に思ってる。
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