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な
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「えっと、豚肉はあったし、ネギもあったかな」
「なに?今日の晩飯?」
「うんそう、キムチ鍋やねん」
「ふーん」
あんまり気の無い感じで絵の具の蓋を閉めて、筆を手に取った諒。自分から振ってきたのに変な奴やな(笑)
中村からの突然の告白を受けて、約一週間。嬉しさのあまり俺は泣いてしまって、翌日には親友の諒に話した。相談に乗ってもらっていたし、それよりもなによりも諒に聞いてもらいたいって思ったから。
昼ごはんを食べながら緊張して話を切り出したら、にこりと笑って「よかったやん、友ちゃん」って言うてくれた。なんかまた涙が溢れて、諒を困らせてしまったけど、そのあとばつが悪そうに飴ちゃんをくれた。
それからいつもと変わらない日々。中村は昔から甘えたやったけど、それが少し酷くなったくらい?(笑)
やたらと「可愛い」って言うてくるから正直俺は、なんて返したらいいのかわからんくて誤魔化してる感じになってるような気がする。嬉しいんやけどね。
「で?俺も行っていいってこと?」
「ん?晩御飯?ええよー、別に」
「・・・嘘嘘、やめとく」
「えーなんで?」
「なんでも」
自分から振っといてなんなん。って思ったけど、ま、ええか。ほんとに来たかったらなんも言わんと来る奴やしね。
あ、絵描くの夢中になってたらこんな時間になってる。今日は早く帰ってくるのかな?
まあ時間通りに終るような仕事やないってのもわかってるけど、多分キムチ鍋を今日の目標に終らせて来るから、それまでには帰ったらんとあかんな。
よし、帰ろう。
「諒、俺帰るわ」
「えっ、今日仕上げるんやったとちゃうん?」
慌てたように俺を見る諒。うーん、そんなことも言ってた気がするけど、特段急ぐわけや無いしな。片付けながら諒を振り返るとなんだか淋しそうな顔をしてた。え、なに?その顔(笑)
「うん、別にまだ締切には時間もあるしな。今日はとりあえずキリがいいからここらへんで終らせとく~」
日展にはまだまだ時間あるし、急いでいいことなんてないよ、きっと。
「あ!そういえば」
「なん?どうした?」
「豆腐無かった!」
「・・・あ、そ。気をつけて帰りや」
「うんっ、じゃーね諒」
「おう」
片付け終わって立ち上がった俺を最後は笑顔で見送ってくれた。今度鍋する時は諒も呼んであげよ。一人暮らしで栄養のあるもん食べてへんやろしな。
・・・ん?いや、諒くらいの男前、女の子がほっとくわけないか。ふと思って、どうしても気になってもう一度作業部屋を覗き込んだ。
「なあ、諒」
「んー?あれ?まだ帰ってへんかってん?」
「うん。・・・あんな?」
「うん?」
立ち上がって俺に近寄って来る。服が汚れん為に着けてるエプロン姿すら男前やん。
「諒、彼女おんの?」
「は?」
「いや、ちゃんとご飯食べてんのかな?って。もし外食ばっかりやったらほんまにうちで、」
「友ちゃん、ありがと。大丈夫やで。中村待ってんのちゃう?」
「あ!そやった!ほなね、諒」
「うん」
ひらひらと手を振られて送りだされた。けど、肝心のところは聞けんやった。ま、えーか。諒の恋話は今度聞いてやろ。
近所のスーパーがタイムサービスやる時間やん。急ごう!
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