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返事
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「はーくーあっ!」
俺の机に両手をついて、高槻が満面の笑みで言った。
「昼休みになったけど、どうすんの?」
「………こっち」
咄嗟にとはいえ自分から言い出したことなので、俺は仕方なく立ち上がった。
風原学園での昼食は、購買のパンか食堂で食べるかのどちらかだ。
購買は当然金を取るが、食堂の学食の方は全品無料だ。
まあ、それも入学金の中に食費が含まれているだけなんだけど。
みんなが食堂へと流れ出す中で、俺と高槻は2人だけ違うところを目指していた。
食堂で高槻と話をしろと?
無理だ。人の目のあるところで、こいつとは一切関わりたくない。
そういう訳で、俺たちが向かったのは中庭だった。
お坊っちゃまとワケアリが集まる風原学園、中庭も当然きれいに整備されている。
剪定された緑に花壇の花、中庭を横切るように煉瓦を敷き詰めた道が通り、その途中にはベンチが幾つか置いてある。
ここを利用する生徒が増えるのは、昼食を食べ終わったあたりだからもう30分は後だ。
今は人っ子ひとりおらず、誰かとこっそり話すにはうってつけ。
煉瓦道の適当なところで立ち止まり、俺は高槻に向き直った。
「ベンチに座んないの?」
「……座ると思うのか」
何が悲しくて、高槻の隣に座って話さなきゃならないんだ。
ニヤニヤしている高槻を思いきり睨み付ける。
「で、なに?告白の返事くれんの?」
「ああ」
高槻が一歩近づいてきて、俺の右手をそっと取った。
甘ったるい、でも似合う仕草に、嫌でも心臓が変に跳ねる。
「じゃあもう一回言う。一目惚れした。白亜のことが好き。付き合ってください」
あの時と同じように、高槻が俺の手を唇へ持っていく。
唇が指先に触れる直前、俺は高槻の手を振り払った。
「嫌だ」
あらかじめ用意していた言葉を、はっきり告げる。
「俺はお前が嫌いだ。これからも好きにならない」
高槻は無表情だった。
怒るでもなく、悲しむでもなく、いつものヘラヘラした笑顔でもない。
それが逆に、ぞっとするほど恐ろしい。
でも、流されないと決めたんだ。
俺は、高槻仁が嫌いだ。
告白は断る。
「………これから好きになる可能性はない?」
「ない。俺はこれからもずっと、一生、お前のことを好きにならない。絶対に」
そう、たとえ、
「俺が、白亜がシロだってばらしても?」
俺がシロじゃいられなくなっても。
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