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冬の女の子・・・・3
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3
お葬式は病院の食堂で、院長先生があげてくれた。
ママのお骨と写真が出窓に置かれ、お花を手向けに先生や職員の人、入院している何人かが代わる代わるにやってきて、中学の黒い制服を着たボクに一言二言声をかけた。
夜、ママのお母さんだという人、ボクのおばあさんがお骨を引き取りにやってきたけど、おばあさんはボクにキーを渡して「車で待ってなさい」と言っただけで、院長室に行ってしまった。
初めて会ったおばあさんは、ママとよく似ていた。ママの栗色の長い髪が灰色になったような人で、やっぱりボクには似ていなかった。
おばあさんの古い型のワーゲンの中は凍えるように寒かった。灰皿の中は吸殻でいっぱい。どれも赤い口紅のあとが付いていて、そんなところもママに似ていた。
森さんの車は大きくて新しく、タバコの匂いもしないし、とても暖かい。
「お腹すいてない?」
ボクは首を振る。
「遠慮しないでね?」
森さんの手が頬に触れる。
マフラーの中に滑り込んでうなじを撫でる。男の人の手。
「うちに行く前にカフェに寄ろう。甘いもの好きだよね?」
「えっ?」
思わず森さんの顔を見上げた。
「あっあの……ボクそういうのは……」
「え?」
「そういうのはいいです……だって……」
そういったボクを見て森さんが困ったように笑う。ポンポンっと肩を叩かれた。
「こーら、そういうことは、きみが言わなくてもいいの」
と言われても、ボクは本当に、甘いものなんかどうでもいいから早くセックスしたいって思ってたんだ。女の子の格好で会った人と女の子としてセックスしたい。
それにカフェとかそういうとこに入るのは怖かった。
女装した男の子がおじさんとデートなんてきっと悪目立ちする。
はやくボクをおじさんの家にでもラブホにでも連れてって。はやくこの世界からボクをかくまって。なんならこのまま車の中でやったっていいのに。
“男の娘、サポできます。写真が趣味なのでご協力いただける方別途”
こっそりセフレの大学生の免許証で成人として年齢確認して、ボクは出会い系SNSのアプリにプロフィールを登録した。ゲイ専用アプリを覗いたことはあるけど、ここは普通に友達や恋人、援助者を探す女の子たちに混ざって「男の娘/女装子」が登録できる。男同士のカテゴリーを見ると、あくまでノンケだけど男の娘とセックスがしたい、ゲイじゃないけど男の人に女の子として抱かれたい、サポート希望、そんな出会いを求める書き込みが驚くほどたくさんあった。
そもそも男同士というのがアダルトに分類されていて、アダルトというのはセックスを求めていることを意味していたし、サポートというのはつまり援助交際というやつで、女の子の特権みたいなそれを女の子の姿の男たちもまた男に求めていた。
手コキ・3000円
フェラ・5000円
ゴム本番・12000円
生本番中出し・30000円
っていうのが、そのサイトの男同士のカテゴリーでの女装男子があげているサポート希望だいたいの相場らしい。
ここでなら、ボクはすぐにでも売春婦になれる。
「娘は気のふれた売春婦でしたよ」
おばあちゃんが院長先生にそう言っているのを聞いた。冷たい廊下に、おばあちゃんのキリッと男みたいに低い声が響いた。
「若い頃から何度も家出を繰り返しては、売春宿から連れ戻したんですよ。この病院に収容していただく前もいかがわしいホテル街に立っていたんです。妊娠もできないほどボロボロの体で」
「あの息子だって、父親が誰なのかもわからない。まったく家の恥でした。娘は」
ぼんやり掲示板を見ていたら、森さんの書き込みを見つけた。
“男の娘、サポできます。写真が趣味なのでご協力いただける方には別途”
“港区 30代 車あり”
プロフ画像……。
「ちんぽでかそう……」
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