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夢の話。 zmem
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突然ですが問題です。
私達の今日の夕飯は何だと思いますか?
正解は私特製のビーフシチューです。
皆さんは好きですか、ビーフシチュー。
私ね、めちゃくちゃ好きなんですよ。
いやあ久しぶりに食べるなあ…牛肉が安くて良かったですよほんと。
しかし卵の種類が沢山ありすぎてどのパックを買おうか迷っていたら少し時間を喰ってしまいました。
少し急いで帰らないとですねぇ。
なんて誰に向けたのかも分からないことを考えつつビーフシチューの材料が入ったレジ袋を片手に提げながらルンルン気分で歩いていたら、ポケットの中の携帯が小刻みに震えた。
何だろうと思い手に取ると、ホーム画面が恋人ーーゾムさんからの通知で埋まっていた。
『どこ、』
『ねえ』
『エミさん』
『どこにいるの、』
『こわい』
いつもの彼とは明らかに違う文の構成、彼にとっては珍しい無変換の文字。
ああ、これはやってしまったな。
家に戻る足が自然とはやくなった。
彼は時折、酷い悪夢を観る。
その内容も悪質なもので、私が彼を貶め、酷い振り方をするというものらしい。
何度も何度も観てきたその夢を、今日もまた観たのだろう。
いつもは落ち着いている彼だが、その夢をみた直後はいつも情緒が不安定になり、少しでもその気持ちを紛らわせる為にこうして私の姿を探す。
私が1人で外出した今日にその夢を観てしまうとは、運が悪いというかなんというか。
さて、彼を抱き締めにいこう。
家に着くと、急いで鍵を取り出して扉を開ける。リビングに繋がる廊下を進み、ドアノブに手をかけるとリビングの方から鼻を啜るような音、そして少しの静寂と彼の声。
「…え、みる」
「はい、ゾムさん。ただいま戻りました。」
リビングのドアを開けて、普段は2人で座っている白いソファに横たわるゾムさんに笑いかけた。
先程の音とこの鼻声、泣いていたのか。
「…っどこいっ、てたん」
まだ少し嗚咽の余韻を残した喋り方で彼は言葉を紡ぐ。
やはり泣いていたようで目元と鼻が少し赤く、彼のこうした姿を見るのは久しぶりだなあなどと場違いなことを考えてしまった。
「少し夕飯の買い物に出掛けていました。一人にしてすみません。」
「そ、っか。
……えみさん、」
「はい?何でしょう」
「ぎゅってして、くれへん」
恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながらそう告げる彼は本当に愛らしいな、と思う。
「ふふ、今日は随分と甘えたさんやね?可愛い。ええよ、っしょ、ほら。」
「おいで、ゾム。」
荷物を置き、ゆるく両手を広げる。
口調を素に戻すと、安心したのか少し表情が柔らかくなった。
のそのそとソファから這い出て、ゆっくり私の背中に腕を回す。
少し低姿勢になった彼は、その形の整った目を閉じ私の胸に耳を当てる。
まるで私が生きていることを確認しているように、心音を聞いていた。
「なあエミさん、」
「ん、どうした?」
「ずっと、一緒におってくれる?」
鼻声のまま彼が問うたのは、私にとって数秒と考える迄も無いことだった。
少し私より低い位置にある彼の頭を撫ぜる。
「っふふ、当たり前やろ。泣いたって喚いたって離してやらんからな。」
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幸せであれ
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