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思い出作り 2
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何をするでもなくただ家の近くを2人でゆっくり歩いていた梓と悠はとある店の前で立ち止まる。
「悠…入る?」
「うん、入ろう」
店の看板には、“ムーン・グランツ”と描いてある。どうやらここは悠の知り合いが経営しているカフェのようだ。
「壮介さーん」
「おお、悠‼︎久しぶりだなぁ。元気だったか?…ん?その子は?」
「ひさしぶりーっ、元気だよ!名前は梓でね、オレのお姫様!」
悠は質問に一つ一つ答えると、梓の唇をべろぉ、と舐めて自分のものだとアピールした。頬を林檎に染めた梓は照れ臭そうにふふとわらう。
「お姫様…梓ちゃんなのか?悠、彼女かー、やるな!」
「いや、梓は男だから…」
「ん?お姫様なんだろ?」
「うん。オレのお姫様。」
「ふーん、そうか…まぁ頑張れよ」
「よくわかんないけどうん!…抹茶オレちょーだいっ、梓は?」
「…カフェラテください」
「あいよー」
「…お金は?」
「壮介さんのおごり」
「…いいの?」
「任せとけって」
「、でも。」
「んじゃ、女の子と間違えたお詫びってことで!小学生に金払わせるような店でもないし」
「…それなら。ありがとうございます」
「だってよ、じゃあ壮介さんよろしくーっ」
「おうよ!」
「…元気な人だね」
「んー、まぁね」
「抹茶オレとカフェラテと、店長から新作のフラワープリンセスでございます」
「…「ありがとうございます」」
運ばれてきたのは、抹茶オレとカフェラテ、それに壮介さんがおまけしておいてくれたこの店の春の新作、『フラワープリンセス』だった。桃のジェラートをベースに、レモン色のレモンクリームや黄緑のキウイソース、真っ白なミルクジェラートと水色のブルーベリーグレープゼリーを春の花畑の様に鮮やかに盛り付けされたものだった。
「壮介さーん!ありがとー!」
「ありがとうございます」
「おう、抹茶オレもカフェラテも甘いからな、さっぱりしたもの合うだろ?梓君はお姫様らしいしな、名前までぴったりだろ?…試食も兼ねて食べてくれ」
「うん!」
フラワープリンセスはさっぱりした爽やかさの中に甘みのあるスイーツで、抹茶オレにもカフェラテにもよく合っていた。ベースの桃のジェラートの香りが近頃雨続きだった梅雨の憂鬱を腹してくれる気がする。壮介さんは性格はいかにも男と言った感じだが、スイーツのセンスは常人離れしている。
「壮介さん、すっごい美味しかった!ありがとー」
「…おいしかった、です」
「そりゃ良かった。悠も梓君も、また来いよー」
「うん、ばいばーい」
「ありがとうございましたー」
店員のお姉さんの声に送られて店を出る。時計塔を見ると、丁度4時をすぎたところだった。家に帰るまであと1時間半。やりたいことは数え切れないほどあるのだけれど、いざとなると何も思いつかない。さてどうしようかと思ったその時、梓が悠の腕を掴んで走り出した。向かった先は…駅。
「う、わっ!…あずさっ?」
梓は何も答えない。周りを気にすることもなくただひたすらに走る。
駅へ着いた頃にはもう2人とも息が上がっていて、会話が出来るような状態ではなかった。
息が落ち着いてから、梓に問う。
「どうしたの?…いきなり走って」
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