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雨の降る日はそばにいて3~腐二次創作弱虫ペダル手通
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あの日あいつは初めて正面から俺を見た。
直視。
通司。
はじめてストレートに呼ばれた。
結婚したんだ。
わかってる?
俺はあんたの亭主。
もう手嶋とは呼ばせない。
呼んで。
下の名で。
呼びにくかったらいっそ「アナタ」って言って。
他人行儀はやめよう。
金城さんと荒北さんみたいに、互いを正面から見合おう。
かれは俺の唇からプリッツを取り、夕陽の最後の残光の中で、俺にそっとロづけた。
俺が選んだ俺の妻。
彼はそういった。
そんなにまでも絶望してたのかい?
俺に。
自分の妻に。
俺はおまえの愛に応え切れてなかった?
ばかだなあ…
おまえは本当にばかだ。
俺を闇の中から引っ張り出してくれたろ?
おまえがかわりに入ってどうすんだ。
俺は病室に一人で入った。
ベッドの長辺に、横様に座
ってるおまえの前に屈み込み、両手を俺の手のひらで包み込む。
純太。
死んだまなざしは動かないけど俺はおまえに語りかけ続ける。
俺の旦那さん。
ゆっくり視線が俺に来る。
愛してる。
巻島さんがいるでしょう?
いない。
俺にはおまえだけだ。
俺にはもう
おまえだけだ。
見上げるように口づける。
人形のように受けながら、それでも手嶋は涙をこぼした。
ほとんど泣いてこなかったんだろ。
ばかだなあ…
ほんとにおまえはばか。
包み込むように抱いている。
かすかに手嶋が抱き返す。
抱擁とはお世辞にもいえない、遠慮がちなおまえの遠慮がちな抱擁。
愛は目に見えない。
だから厄介なんだな。
純太。
これでも俺、
ほんとにおまえを愛してるんだぜ。
心の中で言いながら
俺はおまえを抱いている。
繰り返し、繰り返し。
心の中で言いながら…
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