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5 fin.
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「えっ?!橘?なに、え?は?」
みっともないほど慌てる俺は、それでも橘を突き離すことはできなかった。橘にどういう意図があったとしても、抱きしめられたこの温かさを、自分から手放せなかったから。
「…好きだ。俺も、公太のこと、好きなんだよ」
「え…」
自分の耳を疑った。さっき自分で否定したくせに、これは夢なんじゃないかと思ってしまう。初めて名前を呼んでもらえたことに照れる余裕もなく、固まる俺の背中を、ぽんぽん、と、優しく橘が叩く。その優しい衝撃に、すごく泣きたくなってしまって、隠すように橘の肩口に顔を埋めた。
「ほんとに…?」
「おー。俺がこんな嘘、つくようなやつじゃないって、知ってんだろ?」
つーか、トイレで何やってんだろな俺ら、という笑いを含んだ声に、俺もくぐもった声で笑いを返す。
「うん…、じゃあ…さ、俺と、恋人になってくれんの…?」
「…あー」
期待と不安で小さくなった声で言うと、予想外にも橘が言葉に詰まるから、とんでもなく不安になって、勢いよく顔を上げてしまった。
「あ、違くて。俺が先に言いたかったのに、浮かれすぎてて忘れてたなって思ってさ。もちろん、よろしくお願いします」
男の俺から見てもかっこいい顔で苦笑して、小さく頭を下げた橘に、俺もよろしくお願いします、と笑顔で返す。
トイレを出て、夕日が辺りを優しい橙色に染める中帰る俺たちの、友達よりも少し近い距離が、その関係の変化を表していた。
まだ恥ずかしくて手は繋げないけど、ゆっくりでも、いつかきっと。
トイレの恋神様、ありがとな!
2014.02.06 fin.
山中は龍平から片思いの相談を受けてました。
龍平が恋神様の噂を知ったのは、クラスで誰かが話していたのを聞いたからなんだけど、詳細を話してた本人達に確かめることはできなかったんです。さすがにそんなおまじないみたいなのについて、山中に確認するのは恥ずかしかった…という裏設定。
お付き合いいただきありがとうございました!
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