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コタの黄帯物語-2(完)
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「あれ?」
みんなが帰った後の道場に虎太郎のカバンが残されていた。
「虎太郎?」
トイレやお風呂場を探すけど姿は見当たらない。
かくれんぼでもしているのかな?と、気楽に構えていた志朗だが20分30分経つと流石に不安が募る。
建物の中をくまなく探しても見当たらないので庭に出てみた。
蔵に向かう道に足跡が沢山ついているのに不審感を覚え、中を開けてみるとグッタリとした虎太郎が倒れていた。
「虎太郎!!」
慌てて虎太郎を担いで母屋に運び込む。
電話で瀧川医院に往診を頼んで、待っている間、虎太郎を介抱した。
「……ここは?」
「気が付いたか。往診に来てくれた先生は熱中症だろうって」
「志朗……兄さん」
電球の明かりが眩しかったのか虎太郎は目を細めた。
「ん?」
「兄さん……ごめんなさい」
「何が?」
「俺……」
布団から起き上がろうとしてよろける虎太郎を志朗は慌てて寝かせた。
「ほら、まだ寝てないと」
「でも、俺……兄さんに悪いこと……」
「何かしたっけ?」
虎太郎に取りたてて何かされたという記憶もなかったので頭に疑問符が浮かぶ。
「俺が我が儘言ったから兄さんの昇段が取り消しになったって……」
「ああ、そんな事気にしてないよ。俺は別に沢井流を継ぐ気もないし上から言われて試験受けてるだけだから」
宗家に生まれたから義務としてやっているだけだった。
「それよりお前、入ったばっかりなのに黄帯の練習に食らいついてったんだってな」
「それは……」
兄弟子たちが苛めのように課したキツい練習を虎太郎は文句のひとつも言わずにこなした。
兄弟子の悠夜が来た時に開催されるスペシャルメニューは段持ちでもキツいのにそれさえ言われた数をきっちりやってのけた。
「白帯、青帯なんて一番可愛がって貰えるお得な時期なのに何でそんなに黄帯がいいの?」
「それは……」
真っ赤になって俯いてしまう虎太郎に「まぁいいや、何か理由があるんでしょ」と志朗は頭をヨシヨシした。
憧れのルミさんと同じ帯がいいんだよね~コタちゃん!
(完)
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