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よるごころ-4
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「何だ、この跡?」
家でオムライスを振舞ってから、行きつけのスーパー銭湯に葵琉を連れてきた。
塩サウナで塩を塗ってやっていると、葵琉の鎖骨のあたりに虫刺されのような紅い跡を発見した。
「蚊に刺された」
蚊に刺されただぁ?
今もう10月だぞ。
北海道とか雪降ってんだぞ。
どんだけ生命力強い蚊だよ。
「……」
俺の疑心に充ちた視線が気に入らないのか葵琉はそっぽを向いてしまった。
コトッ。
体勢をずらしたはずみに、葵琉が脇に置いていたハンドタオルがずれて、包まれていたビニール袋が転がり落ちた。
「そのネックレス、よっぽど大事なんだな」
シルバーのチェーンの先にダイスの付いたネックレスを葵琉は風呂に入る間も、サウナに入る間も肌身離さず持ってきていた。
ご丁寧にジッパー付きのビニールに入れたあとハンドタオルに包んで。
んなもんロッカーに入れておけばいいのに。
「シロに貰った」
はいはい、またシロな。
いいよなー、宗家のお坊っちゃまは。
プレゼントひとつも弟子にここまで大事大事に扱われて。
俺なんて受け持ちの生徒から徹底的に避けられてたもんな。
志朗んとこの上の兄ちゃんが熱出して代講に行ったら全員休みやがるし。
「おじちゃん」
「ん?」
「おじちゃんって試験の前とか、試験の夢見る?」
俺はないなー。
そもそも、前の試験もいつだったか。
色帯時代みたいに年2回もやらないし、段が上がると試験の間隔もそれに比例して開くからな。
「試験の夢見たのか?」
「うん」
「どうだった?」
葵琉は、うーんと唸りながら天井を見上げた。
「何かレインボーの帯貰った。レインボーの帯って何番目?」
「そうだな、お前が俺より上手くなったらお前にだけ作ってやる」
だから頑張れよ、と塩まみれの背中を叩いた。
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