アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
よるごころ-5
-
翌日は休みだったので、昇級試験にふらりと顔を出してみた。
後進たちの成長をこの目で見届けるためだ。
決して葵琉と志朗のイチャイチャを茶化してやろうなんていう目的ではない。
「おじちゃん」
沢井家の敷地に足を踏み入れると、池の縁に腰掛ける後ろ姿を発見した。
「何だお前、風邪引くだろ。志朗はどうした?」
ついつい世話をやきたくなってしまうのは志朗の庇護癖が伝染したか。
「他の子の練習の邪魔になるから外で遊んで来いだって」
「こんな寒いのにか? 俺が志朗に言ってやろうか?」
「いい」
昨日、葵琉に見せて貰ったパンフレットでは本番までまだ3時間ぐらいある。
初めての試験なんだから念を入れて練習した方がいいだろうと思い、葵琉を志朗の所に連れていくと、あいつは幼稚園児に付きっきりで型を教えていた。
俺たちの気配を感じたのか一瞬こっちを見たがすぐに向こうを向いてしまった。
「シロ……」
俺にだけ辛うじて届くような小さな声が志朗の耳に入るわけがない。
「大丈夫だ、俺が付いているからな」
過保護なお前が居なくても葵琉は立派にやってのけれるんだと証明してやる。
志朗、後で吠え面かくなよ!
葵琉の手を引いて、空いている練習場に連れていった。
「お前にだけ特別に稽古を付けてやる」
沢井流の昇級・昇段試験では帯ごとに試験の点数を競いあい、上位3人にはメダルが与えられる。
今回白帯で受けるのは5人。
志朗のクラスの幼稚園児たちは型の暗記が怪しいから葵琉は十分にメダル圏内に入っている。
俺の力でお前に一番いい色のメダルを獲らせてやる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 86