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とらごころ-3(完)
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ギュウギュウと抱き潰されて「ギブ、ギブッ」と手をバタバタさせる葵琉先輩を見て志朗兄さんの顔が険しくなります。
「虎太郎!! 葵琉を離せ!!」
志朗兄さんが葵琉先輩に覆い被さる俺を引き剥がそうとしますが、ガッチリと組まれた俺の腕はびくともしません。
「お前……ルミ先生の事が好きだったんじゃないの」
ずっと秘めている恋心を応援してたのに。
がっかりした。
そう言って葵琉先輩がアップゾーンに向かい、志朗兄さんと二人で部屋に残されました。
「ごめんな、虎太郎……」
「!?」
「お前が考えてる事なんて全部お見通しだよ」
「志朗兄さん……」
俺の渾身の演技も志朗兄さんには見抜かれていたようです。
「すみません、志朗兄さん。体重を増やして階級変えようと食べまくったんですけど太れなくて……」
カロリーの高いお菓子を片っ端から食べまくっても、ホイップクリームをチューブから直に飲んでも、レーズンバターを丸ごと食べても、とにかく何をしても太れないのです。
「今度は逆に絶食して体力を削ろうとしたらおかみさんに豚カツ口に突っ込まれるし……。最後の手段で犬に噛まれようとか色々考えたんですけど丁度いい犬が居ないまま今朝を迎えて……」
「それで、俺の目の前で葵琉を襲えば俺がお前をタコ殴りにしてくれると考えたんだな」
馬鹿だなぁと笑って志朗兄さんは俺にデコピンを食らわせました。
「強情なあいつの決めた事なんだよ。お前が何をしようとあいつの心は動かない。ここを去るにしても晴ればれとした顔で発てるように最後を飾ってやって欲しいんだ」
「兄さん……」
「もうすぐ始まる時間だ。あいつの晴れ舞台、見届けに行ってやろう」
(完)
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