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沢井家のお正月-2
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それにしても何だってあの人は急に帰って来ることになったんだ。
『年末年始だけ40時間ぶっ通しでパチンコを打てる県があるんだ』
朝早く発つからもう寝ると昨日の夕方、稽古の代行を命じられた。
『31日から1日までは何があっても音信不通だからな』
その決意は一体何処へ消えてしまったのか。
今は31日の夕方18時。
まだあと31時間もある。
『40時間はどうなったんですか?』
そう送るとすぐに返信が来た。
『もう飽きた。背中が痛い。帰りたい』
さいですか。
いっくら好きなことでも、40時間もやり続けろと言われたらもはやそれは苦痛でしかないんだろうな。
飽きたのはよくわかったけど、何でそこで餅つきなんだ。
何で俺を巻き込むんだ。
文句を言っても、この兄弟子には10倍返しにされるのが関の山だろう。
さてと。
杵と臼でも探しに行きますか。
「どこ行くの?」
「どこって蔵だよ。杵と臼を教今日中に見つけないと」
「俺も行く」
「ここに居な。蔵は寒いし風邪引きたくないだろ」
「これ着てくからいい」
葵琉が手に取ったのは俺のダウンジャケットだった。
俺に断りもなくさっさと羽織って通した袖からは指先がちょこっとだけ覗いている。
ジャケットが歩いているようなその姿に胸の奥がトクンと音を立てる。
こういうの何て言うんだったかな。
彼女に自分の制服を羽織らせたクラスメイトが『萌え』だか何だか喚いていた光景が脳裏を過った。
小さい葵琉の袖からチラッと見える小さい手に指を絡めたくなった衝動をグッと呑み込んで拳を握りしめる。
「早く行こ、シロ?」
「仕方ないな。連れてってやるけど寒くなってきたら部屋に戻るんだぞ」
「うん」
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