アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
シロさんの聞き耳頭巾-5
-
「なぁ。何かさっきから俺めっちゃディスられてねぇか?」
「うん。今までのはちょっとした前フリでここからが本番」
ちょっとした前フリどころか、結構な爆弾発言なんだけどな。
「シロが言うには悠夜おじちゃんはとにかくめちゃくちゃな人なんだけど、顔は美形だし沢井流の腕は誰も敵うものがいないし、明るいノリに何だかんだみんな付いてくるから流派を継ぐにはこの人しか居ないって」
これは恥ずかしい。
自分の事を言われてる時も相当恥ずかしかったし、悪口言いまくってたのがバレて明日の俺の命には黄色信号が点滅している。
だけど陰でこっそり誉めていたのを暴露されたのは、そんなあれやこれやを余裕で上回るほど究極に恥ずかしい。
もう無理だ。
これ以上ここには居られない。
突如として降りかかった羞恥プレイに耐えきれず荷物を纏めて自動ドアからこっそり退出しようと決意したところでまたもや問題発言が耳に飛び込んできた。
「じゃあ、そんな可愛い弟弟子の大事な大事なお姫様は丁重にもてなしてやらないとな」
お姫様。
その響きに葵琉の自称ナイトとしての使命感が芽生え、足が止まる。
大事な姫を陰からそっと見守るのもナイトの役目だ。
「あ、唇くすぐったいからやだ」
「これな、俺が最近見付けたリップバームなんだ。すごくプルプルになるんだぞ」
「そうなの?」
「ああ、そうさ。志朗のやつも喜ぶぞ~」
唇だぁ?
唇なんて、軽々しく他人に触らせていい部位じゃないだろ。
自分で塗ると言い張る葵琉に悠夜兄さんが「いいからお兄さんに任せとけって」なんて言うのが耳に入って来るから益々不安は募るばかりだ。
「あ、やだ。そこ駄目」
「気持ちいいだろ?」
「だから駄目なの」
「何だよ~ちょっとぐらいいいだろ」
今度は何処を触らせてるんだよ。
ちょっとぐらい触る気持ちいいとこって何処だ!
沢井流で培った筈の平常心は脆くも崩れ去り、心を落ち着けるべく上っ面だけ読んでいた書類の文字はついに一文字たりとも入って来なくなった。
「あっ、中は駄目。中はシロにやってもらうの」
「いいだろ? 俺の方が上手だぜ~」
中だぁ?
何の話だ、何の!?
「俺の方があいつより絶対経験値もあるからな」
「それは……否定できないけど」
「だろ?」
「だけどシロがいい」
経験値?
俺が兄さんより劣っている経験値……何の経験値だ?
沢井流の経験値は確かに悠夜兄さんの方が遥かに上だ。
人生の経験値も数年早く生まれたあの人の方が勝っている。
って、そんな事じゃあないんだ。
本当は何の経験値なのか薄々感付いているのに、認めたくなくて悪あがきをしている脳味噌に容赦なく正答が突き刺さる。
ニャンニャン、ニャンニャン、ニャンニャン、ニャンニャンーー。
さっき嫌というほど聞かされた片仮名が群れをなして頭の中をグルグルと行進する。
ない。
断じてそれはない。
悠夜兄さんの良識を俺は信じたい。
ハチャメチャな人だけど、弟弟子の恋人を略奪するほど悪人ではない筈だ。
「思いっきり気持ちよくしてやるよ」
「それでもヤだっ!!」
「!!」
やっぱり、さっきの言葉は取り消しだ。
俺こそが法律なんだと言わんばかりのゴーイングマイウェイな兄弟子に世の中の常識は通用しないという事実を今まで散々身をもって教えられてきた。
このままでは本当に葵琉の貞操が危ない!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 86