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シロさんの聞き耳頭巾-2
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俺が帰って来たのにも気付かず二人でギャースカ騒いで居るから、待ち合いの椅子を使って書類の整理を進める事にした。
「あーあ、折角いい感じに大人っぽかったのにな。シロが見たら何て言うかな」
書類を広げたはいいけど、衝立の向こうから俺の名前が飛んできたせいで内容が全く入ってこない。
「問題ないだろ。あいつはちょっと幼いぐらいが好みだからな」
「ちょっ」
今の発言は聞き捨てならない。
うちの道場には小さい子供を通ってるんだよ。
変な噂が流れたらどうしてくれよう。
何て事言うんですかと、兄弟子に注進しようと立ちあがり掛けて「待てよ」と静かに座り直す。
今出ていったら聞き耳を立てていたのが丸分かりだ。
別に隠れようとしたわけじゃないけど、結果的にそうなってしまっているから。
「幼いのが好み?」
「そうだぞ。だから心配するな!」
何を自信満々に言い切ってくれてるんだ。
聞きようによっては盛大に誤解を招き兼ねない発言だ。
兄弟子の出まかせを純粋な葵琉は鵜呑みにしたようで「幼いの、かぁ」なんて呟いている。
俺は決してショタコンではない。
今度きちんと訂正しておかないとな。
「ほら、いい感じに幼くなっただろ? これであいつもお前の虜だ」
「虜……」
もう既に365日、24時間俺は葵琉の虜なんですよ。
衝立の向こうに居る兄弟子の心にそっと語りかける。
出会った時には数えきれないぐらい分岐のあった分かれ道がだんだん減って遂には一本道に。
まるで答えを知っている迷路のように、俺の人生は葵琉に向かって続いている。
二人で作る温かい未来を描く俺の心に、聞捨てならないやり取りが衝立の向こうからズイッと割り込んできた。
「可愛いな、お前」
「ちょっと、おじちゃん何処触ってんの!!」
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