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沢井流冬の心霊騒動-マモタン恋のキューピッド篇-1
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事の始まりはちょっとした違和感だった。
綺麗に整列させて置いてあるミットの位置がずれていたり。
壁に立て掛けてあるモップが朝になったら倒れていたり。
戸締まりをして帰ったはずの道場に何者かが忍び込んだ形跡があるのだ。
そんな些細な異変は数日続き、今度は生徒の間で妙な噂が流れ始めた。
三味線教室の縁側に忘れ物を取りに行ったら、真っ暗な教室から三味線の音が聞こえた。
綺麗に掃除して帰った畳が翌日になったら土で汚れていた。
噂というものは伝わるうちに尾ひれが付くもので。
人魂に追いかけられただの、幽霊を突きと蹴りでやっつけただのと盛りに盛ったエピソードで道場は大混乱。
そして上層部もざわめき出したある日、ついにあの男が動いた。
ーーーーーーーー
「志朗ーーーーーーっ!!」
シロの部屋でうつらうつらしていたら、悠夜おじちゃんの大声に叩き起こされた。
もう、一体なに!?
せっかくいい夢見てたのにな。
シロとスイーツバイキングに行って、両手に山盛りのケーキを持ってきたところなのに。
「何ですか。そんな大声出さなくても聞こえますから」
ドカドカと部屋に入って来た悠夜おじちゃんはシロの苦言をものともせず、椅子に腰を下ろした。
「志朗、お前も知ってるだろ? 最近の心霊騒動」
「ええ、まあ」
「じゃあ話は早い。お前、あれ何とかしろ」
あんなのただの子供だましでしょうと呆れるシロにおじちゃんが畳み掛ける。
「虎太郎とルミには話つけてあるからな」
ん?
これは二人をくっつけるチャンスなのでは!?
「俺いいよ、参加しても」
「お、葵琉は付き合いがいいな~。お兄さんと仲良く幽霊退治しような」
悠夜おじちゃんの手が俺の腰に回ったのをシロが表情ひとつ変えず払いのける。
「分かりましたよ。やりゃあいいんでしょ、やりゃあ」
渋々参加したシロと道場で稽古をしていた虎太郎とルミ先生も呼びに行って作戦会議が始まった。
と言っても、みんなぶっちゃけ今回の幽霊騒ぎは悠夜おじちゃんの自作自演じゃないかと疑っている。
こないだゴーストバスターズの再放送やってたから真似事がしたくなったんだろうって。
「んなわけないだろ」
「そぅお? 兄貴いっつもわけわかんない思い付きでみんなを振り回すじゃない」
「今回は何も知らねえっての」
俺としては幽霊が居ても居なくても関係ないし、虎太郎のお尻を押してあげれたらそれでいい。
いまいち真剣味に欠ける作戦会議だけど、とりあえず夜回りでもしてみるかという結論になった。
おかみさんとユキが三味線教室の旅行で、シロのおじいちゃんと、一番上のお兄さんも寺院関連の行事で留守。
今日明日の沢井家はゴーストバスターズの貸し切りだ。
シロと二人なら出前でも取ろうと思ってたけど、どうせなら合宿っぽくみんなで作ろうって流れに持ってった。
ご飯作る担当は一日目の昼がシロ、夜がルミ先生と虎太郎、二日目の朝が俺で昼が悠夜おじちゃん。
夜は品数が多くて大変だから二名体制がいいと主張して、俺の用意したイカサマくじで無事二人をペアにする事に成功した。
仲良くお料理してくれるといいな。
そんな二人が作ってくれたのはお泊まり会の定番カレーライス。
グリーンサラダとスープにラッシーも付いた『初めての共同作業定食』は文句なしに美味しかった。
ちなみにシロは炒飯。休日のお昼といったらこれだよね。
夕飯の後で夜回りの時間とルートと順番決めをした。
心霊現象が起こったのは三味線教室と道場だからそこを重点的に巡回。時間は9時と11時の二部制で。
「虎太郎はルミ先生と一緒に行って、何かあったら守ってあげて」
「こいつが守って貰うなんてタマかよ」
余計な事いうから悠夜おじちゃんのお尻を足の甲でペンっと蹴ってやった。
「俺はシロと行くから~」
「じゃあ俺は誰と行くんだ?」
「おじちゃんは留守番」
「留守番だぁ?」
「だって疑われてるし」
仲間外れにされて不貞腐れてるおじちゃんだけど、いつも妙な思い付きでみんなを振り回すからこういう時に信用して貰えないんだと思う。
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