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沢井流冬の心霊騒動-マモタン恋のキューピッド篇-4(完)
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ちょっと待っててと言って部屋を出ていったルミ先生は、すぐに何かを抱えて戻ってきた。
「実は全ての心霊騒ぎの真犯人はこの子でした」
「はあっ!? お前誰だよ!!」
悠夜おじちゃんの視線の先では茶色い子犬がルミ先生に抱っこされている。
いぬ、可愛い。
じゃなくて誰?
真犯人ってどういう事?
「すみませんでしたぁっ!!」
突然深々と頭を垂れた虎太郎に一同の視線が集まる。
道場に迷い込んだ子犬がどうしても見捨てられず、縁側の下でこっそり飼っていた。
「だったらお前ん家で飼えばいいだろ」
「うちは、魚や小動物がいっぱいいるので」
いくら小さいといえども犬は困るから、飼い主が見つかるまでは道場で何とか隠して飼う事にした。
夜は冷えるので三味線教室の部屋に上げて、そこで走り回った子犬が結果的に諸々の心霊騒動を巻き起こしたというのが全ての真相だった。
「お前ら散々俺の事疑っておいて犯人犬ってどういう事だよ」
「すみませんでした、悠夜兄さん」
「ごめんね、おじちゃん」
流石に今の今まで登場してもいなかった犬が真犯人とはどんな名探偵でも見抜けないよ。
「で、どうすんだ。そいつ」
「はい、その……実はルミさんが預かってくれる事になりまして」
「お前がぁ?」
「何よ! 文句あるの?」
散歩とかどうすんだよと言う悠夜おじちゃんにルミ先生が何とかなるわよと言い返す。
「あの、散歩なら毎日俺が行きますので」
「おう、そうして貰え」
朝晩2回の散歩を虎太郎が担当する事で話は纏まった。
犬の散歩に託つけて毎日朝晩好きな人に会えるからいいね。
虎太郎の恋路がトントン拍子に進展していって嬉しくて仕方がない。
「ところでさっきの『預かってくれる』って何なんだ? お前の犬になるんじゃないのか?」
「ああ、それ? 虎太郎が5段に上がって支部長になったら1人暮らしするからそうしたら迎えに来るんだって」
ん?
その頃には愛着が沸いて手放せなくなるぞなんてルミ先生を脅かす悠夜おじちゃんの言葉が入ってこないぐらい何か嫌な予感がする。
5段……支部長……迎えに……。
この単語の羅列、最近どっかで……。
「あーーーーーーっ!!」
「どうした、葵琉?」
「何でもない、ただの発声練習」
びっくりさせるなよなーと文句を言うおじちゃんは放っておいて、掌で顔に蓋して昨日の夜を振り返る。
『俺が5段に上がって支部長になったら必ず(犬を)迎えに来ます』
迎えに来ますってさ、犬の事なの!?
プロポーズしたんじゃなかったの!?
俺、めっちゃ勘違いしてたんだーーーーっ。
全部俺の早とちりだったなんて……。
あんなに喜んだのに。
てか、赤飯まで炊いちゃったじゃん。まだ炊飯器に残ってるよ。どうするのさ、あれ?
しかも悠夜おじちゃんに鯛のフルコースリクエストしちゃったし。
本当ショック。
とりあえず鯛は早いとこキャンセルしておかなくちゃ。
(完)
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