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「そろそろ起きれば?」
揺り起こされて、目を開ける。
「ん…今、何時?」
セックスの余韻が残る気怠い体で寝返りを打って篤志に訊く。
「9時前だけど。」
そう言えばバイト10時からだった。
引き受けなきゃよかったな。
ささやかな後悔を打ち消しながら、疲労と睡魔に引きずられる体を無理やり起こしてバスルームへ向かった。
「お前さ、S高だったんだって?」
乱雑に髪を拭きながら身支度を整えていると煙草をくわえた篤志が、今日の天気を言うような口調で呟く。
「なんで知ってんの?」
「めちゃくちゃ頭いいじゃん。なんでフリーターなんかしてんの?」
俺の問いかけには答えない篤志が質問で返してくる。
その言葉を、今度は俺が無視して家を出た。
カンカンと音を立てて階段を降りる。
揺れる視界は眩暈を引き起こす。
そう言えば、昨日の昼から何も食べてないんだっけ。
篤志の言葉でどうでもいい過去を思いだした。
通ってた中学では、常にトップだった。
周りの期待に応えたくて難関って言われてる高校を目指して。
プレッシャーに押し潰されそうになりながら、それでも手にした合格は1つの結果に過ぎなくて。
その意味を理解した時には、今までとは全く違うレベルの中で試されるだけの毎日が待っていた。
…あの頃は、決まっていない未来が怖かった。
努力をすれば報われるって言う幻想が打ち砕かれて。
でも、思い通りに行かない現実と折り合いを付けられなくて。
自信を失って、その戦いから逃げた。
その後は落ちる所まで落ちたっていう、ありがちな話。
思い出したくない事ほど、蘇ってくるときはやたら鮮明だよな。
今俺は、決まってしまった未来が怖いよ。
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