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夢見る小鳥2
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一対一でのカウンセリングが終わり、医師は尊も交えて先ほど小鳥に話したのと同じ説明をした。
医師が話している間、小鳥の気持ちはどんどん重たくなる。
姫子が居なくなった今でも、彼女が望んだ何も出来ない子供でいなければと思う心。
いや、
“いなければ”
というより
“いたい”
と、もしかしたら思ってしまっているのかもしれない。
姫子が小鳥に無力な子供であることを望んだのは、小鳥への愛情からだ。
彼女が望んだ自分を否定するのは、まるで彼女の愛情を否定するようで…
医師は無意識だと言っていたが、確かに小鳥の心は自分で何でも出来るようになる事を拒んでいるのかもしれないと、すんなり納得できた。
その心に引っ張られて、自立出来るようになる事を拒否する体。
まるで、姫子の為だけに生成されたかのような小鳥。
やっぱり、こんな面倒な自分を必要とするのなんて姫子だけじゃないだろうか。
医師の話を聞く尊の隣でそんな事を考えていると、いつの間にか話は終わっていた。
「おーい、小鳥?ぼんやりしてどおした??もしかして落ち込んでるのか?」
尊が、小鳥の顔を覗きこんで優しく頭を撫でる。
「……。」
何と答えて良いか分からず黙りこむ小鳥に、尊が苦笑する。
「どうせまた、やっぱり俺は姫ちゃんが居ないと生きていけないとか、姫ちゃん以外に、こんな自分の事は誰も欲しがらないとか考えてんだろ。」
確かにそう思った。でも、それだけじゃない。一番重たく心にのし掛かっているのは…
「あと、姫ちゃんが望んだ通りのままでしかいられない自分じゃ尊に悪い…とか考えてたりするんだろ?」
一番の気掛かりを尊にピタリと言い当てられ、小鳥は呆気にとられて瞬きをパチパチと繰り返した。
「…何で分かったんだ?」
「ん?そりゃーお前俺のこと大好きだし?俺が望むような自分に変わりたいとか、姫ちゃん色にどっぷり染まったままの自分じゃ俺に申し訳ないとか、いかにもお前が考えてそうな事だろ。」
また言い当てられた。
姫ちゃんが望んだままの自分で居たいと思うのと同じくらい、小鳥は、尊が望むような自分に変わりたいとも思っている。
尊は小鳥に色んな事を教えてくれる。だからきっと、尊は小鳥が色々一人で出来るようになる事を望んでいるのだろう。
何も出来ないままでいたい。
何でも出来るようになりたい。
両方は無理で、それが小鳥は苦しい。
コクリと頷くと、すかさずデコピンが飛んできた。
「…痛い。」
額を両手で押さえて恨めしげに呟けば、お仕置きだから痛くて当然だと返された。
「何の、お仕置きなんだ?」
「俺のとっておきの愛の告白を、お前が忘れてることに対してだよ。」
「……?」
「俺、病院の屋上で言っただろ?俺は今のままの小鳥が大好きだって。」
姫子が大好きで、姫子の為だけに一生懸命になって。そうして出来上がった今の小鳥が好きなのだと、尊は小鳥に言い聞かせる。
「言っとくけど、俺は別に小鳥に一人で何でも出来るようになって欲しいとか思ってないから。俺が小鳥に色々教えるのは、単にそれが楽しいからだぞ?」
別に、一人で出来なくても良い。
一人が無理なら一緒にやれば良い。
そうやって一緒にやっていくうちに、自然と出来るようになるだろうと、自信に溢れた笑顔で尊が言いきる。
「ーーっ!!」
我慢できなくなって、思いきり尊に抱きついた。尊はそんな小鳥を、危なげなく受け止めてくれる。
尊はよく小鳥に、お前は何考えてるか分からないと言うが、そんなの嘘だ。
時々こうして驚くほど気持ちを見透かして、小鳥が一番欲しい言葉をくれる。
苦しい時、尊の言葉はいつだって小鳥の気持ちを掬い上げてくれる。
「お前を甘やかすのは今や俺の趣味だからな。いきなり何でも自分で出来るようになられたらむしろ寂しいって。」
甘い声でそんな事を言われ、ますます強く尊に抱きついた。
尊の胸に顔をうずめギュウギュウしがみつく小鳥を見て、本当に小鳥君は清峰さんが大好きなんですねと医師が笑う。
そんな医師に、尊は恥ずかしげもなく、俺も小鳥が大好きですよと返していた。
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