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小鳥の夏休み18
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小鳥は、尊の笑顔に弱い。
優しく笑ってお願いされると、たいてい言うことをきいてしまう。
結局、電車での出来事も尊に話してしまった。
尊はやはり痴漢に腹をたてて話が進むにつれ険しい顔になったが、小鳥が話し終わると、よく頑張ったなと褒めて抱き締めてくれた。
尊に抱き締められると、胸がぽかぽかと暖かくなる。この腕の中には、幸せしかない。
尊は本当にたくさんの幸せを小鳥に与えてくれる。だから小鳥も、もっともっと尊を幸せにしたいと思う。
出だしから痴漢にあって躓いたものの、尊と合流してからは何のトラブルもなく穏やかに撮影が始まった。
石の教会は、尊が事前に見せてくれたネットの評判通り素晴らしい建物だった。
石のアーチから自然の光が射し込む光景が幻想的で、本当におとぎ話の中に居るように感じる。
昨日用意してもらった衣装に身を包み、アクアと一緒に空っぽの鳥籠を抱えて手を繋いで歩いた。
ただ歩いているところを撮られるだけなので、NGもほとんどなく、順調に撮影が進んでいく。
途中で地域限定のソフトクリームを食べたりもして、観光も十分に楽しんだ。
夕方には別荘に戻り、いよいよ最後のシーンの撮影だ。
夕日をバックに、小鳥とアクアは相変わらず空っぽの鳥籠を持って立っている。
静がケージから放した幸が小鳥の持つ鳥籠に入った ら無事に撮影終了となるのだが、そのシーンがなかなか上手くいかない。
「ピィー!!!」
勢いよくこにらに向かって飛んできた幸は、鳥籠の中ではなく小鳥の肩へととまった。
「ピッ!ピッ!!」
そのまま、小さく鳴き声をあげながら小鳥の頬へと擦りよって離れない。
今日、観光地を回って撮影している間は幸は別荘で留守番だった。小鳥と離されていたのが不満だったらしく、帰ってきてからは小鳥にべったりだった。
「あややぁ~。さっちゃん、ことりんと離れ離れがよっぽど寂しかったんだねぇ。」
アクアがそんな幸の頭を小指でそっと撫でながら困ったように笑う。
「小鳥に懐いてるからこのシーンは余裕だと思ってたけど、予想外に躓いたなぁ。」
もう少しすれば夕陽が沈んでしまう。尊も、どうしたものかと頭を悩ませ始めていた。
小鳥としては、幸が懐いてくれるのは嬉しいし、可愛いので思いきり甘やかしてやりたいと思う。けれど、このままでは撮影が終わらない。
「幸、尊が困ってる。終わったらいっぱい遊ぶから、今は撮影頑張ろう。」
「ピッ?」
不思議そうに首を傾げる幸を手のひらに乗せて、目線を合わせる。
小鳥は、ポケットに入っていたおやつの卵ボーロを取り出した。
「頑張ったら、これあげるから。」
袋から一粒だけ出して、指で細かく砕くと幸に差し出す。
少し躊躇った後一口食べると、幸は驚くほどのスピードで卵ボーロを食べきった。どうやら、気に入ってもらえたらしい。
「撮影が終わったらいっぱいあげる。だから、頑張ろうな?」
「さっちゃん頑張れ~!」
「ピッ!」
伝わったのか伝わっていないのか分からないが、小鳥とアクアに幸は元気良く返事をした。
側で待機していた静の持つケージに幸を戻し、撮影を再開する。
幸は迷いなく小鳥の持つ鳥籠へ入り、散々手こずっていた撮影は無事に終了した。
「お疲れ様。幸、約束の、出演料だ。」
「あんだけ苦労したのに、まさか卵ボーロで解決するって…安い出演料だなぁ。」
どうぞと卵ボーロを差し出し幸に食べさせる小鳥に、横から静がぐったりとしつつも、感心したように呟く。
「いや~小鳥のおかげで助かったわ。ありがとなー。」
尊に、わしゃわしゃと頭を撫でて褒められ、役に立てた事が嬉しくて顔が緩む。
そんな小鳥を見て、尊も穏やかに笑った。
「さ!撮影も終わったし、バーベキューの準備にとりかかるか!」
予定では今日軽井沢を出発するはずだったが、一日撮影で動き回って疲れたので、もう一泊することになった。
同じくもう一泊してから帰るらしい縁達も呼んで、夕飯はまたバーベキューをする。
臣と美羅が既に準備を始めてくれていて、縁達ももうすぐこちらに着く予定だ。
「薫と翠が来たら衣装返さねーとな。小鳥とアクアちゃんは先に着替えて来てくれ。」
「はーいっ!ことりん行こー。」
アクアに手を引かれ、別荘へと歩きだす。
「この服、背中のとこがすごい脱ぎにくいんだよ~。ことりん、着替えるの手伝ってもらってもいい?」
「わかった。」
確かに、アクアの衣装は背中の部分に編み上げのような細工が施されていて、一人で脱ぐのは難しそうだ。
「ありがとー!」
「「ちょっと待てっ!!」」
そのまま二人で手を繋いで別荘の中へ入ろうとした所で、尊と助にガシリと肩をつかんで引き止められた。
「なんだ?」
振り向いて首を傾げる。
「いや、なんだ?…じゃねえよ!小鳥がアクアの着替えを手伝うのはおかしいだろ!」
「どーしてぇー?」
助の言葉に、アクアも小鳥に続いてコテリと首を傾げた。
「小鳥は男子、アクアちゃんは女子。幼児ならともかく、もう二人とも12歳なんだから、さすがに着替えが一緒はまずいだろ?」
言い聞かせるような尊の言葉の意味も良くわからず、小鳥は更に深く首を傾げた。
対してアクアは尊と助の言いたいことが分かったようで。
「大丈夫だよ!ことりんのことを異性として意識なんてしてないから、というかそう言う時限を越えた仲よしだから!!」
ね?と同意を求められ、小鳥もようやく尊と助の言わんとする事がわかり、頷いた。
「家に泊まりに来た時とか、お風呂だって一緒に入ってるくらいだし、着替えぐらい…」
「「はぁ!?」」
アクアの発言に、尊と助の驚きの声が重なる。二人とも、信じられないというような顔をしている。
「…何か、問題あるか?」
「「問題しかねぇわ!!!」」
素直に疑問を口にすると、尊と助に全力で突っ込まれた。
結局、アクアの着替えは美羅に手伝いを頼むことになり、小鳥は一足先に別荘の中へ入った。
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