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-マオside-
生徒会室では苛立ちながら一人、生徒会長であるマオが黙々と書類を片付けていた
ふと、壁にかけられた豪華な時計を見る
風紀委員へ重要書類を届けに行くと行ったきり、クウリが戻ってこない……何かあったのか?
幻惑の魔法を解いた時のクウリの顔が浮かぶ
抱きたい・抱かれたいランキングでこの学園の全てを突然任された俺とクウリは、こんな下らない理由で責任を任されたことに驚愕した
しかも拒否権が無いとか………普通はやる気がある人族がやるんじゃねぇのか?
「人族は下らないことばっかり思いつく」
吐き捨てるように言い、要らなくなった書類を投げ捨てる
実はマオも転生者で、かつて勇者と戦って敗れた魔王だった
最初は人族として生まれ変わったことに怒りが湧いたが、クウリと再会したことで受け入れた
今大人しくこのように働いているのだって、クウリと俺が過ごしやすい学園にする為だった
…まぁ、人族が管理する学園に居たくなかったというのもあるが…
しかしまさかたった一人の転校生によって、こんな目に合う日がくるとは思わなかった!
ふと堕落してしまった役員共を思い浮かべる
何度か仕事をするように言ったが、結局戻ってこなかった……誘惑に弱い人族は、1度堕落したら簡単には戻ってこれない
「懸命に働くあいつらを見て、少しは人族を見直してはいたんだがな…。もうどうでもいいが」
別に居なくても俺とクウリなら全員分こなせる
しかし勉学の時間で一日の殆どが終わってしまうこの状態でとなると無理があった
こなせるが、こなす時間が圧倒的に足りないのだ
休みに片付けようとしても溜まりに溜まっている状態なので、減りはするが終わらない
もう一度時計を見る
やはり遅い……仕方がない、捜しに行こう
そう思い立ち上がった時、扉がノックされた
「誰だ?」
「俺は今日入ってきた新入生でクリアといいます。実はクウ…書記が倒れているのを見つけて保健室に運んだのですが、重要書類が落ちていたので、取り敢えず届けに来ました」
倒れた…?
扉を開けると黒髪の平凡な顔の生徒が立っており、クウリが持って行った筈の書類を差し出す
どうやら本当のことらしい
やはり、無理にでも休ませればよかったな…
少し後悔しながらも受け取り生徒に聞いた
「…クウリは大丈夫だったか?」
黒髪の生徒はふわりと天使のような愛らしい笑顔を見せて、氷のように冷たい声で言った
「……その様子を見るに、クウの状態を知ったうえでほうっておいたな?」
「あ?」
【光を持たぬ哀れな水は、光を閉じ込め宝とする。触れし者には小さな罰を。傷つけし者には災いを】
歌うように唱えられた詠唱と、青い光の筋に反射で武器を取り出し受け止める
するとガチャンッ!とぶつかった物は壊れ、辺りに散らばった
「…氷…か?」
ひんやりと冷気を出す塊に眉を顰めた俺は、すぐに手元の異変に気付き、剣を手放した
ガッチャンッ!!
落とした剣は氷に覆われ、粉々に砕けた
「突然、なんのつもりだ…?」
距離を取りながら聞くと、生徒は憎しみを込めた目で睨んだ
「今度はクウを捨てる気か?この裏切り者」
その言葉に、ハッと息をのむ
「まさか…ノイズか?」
黒髪の生徒はニィッと妖艶に笑った
その笑顔はノイズがよく敵に向けていた殺意の篭った笑顔だった
【光を持たぬ哀れな水は、光を閉じ込め宝とする。触れし者には小さな罰を。傷つけし者には災いを】
出来上がった氷の剣が再び俺に振り下ろされる
俺は避けずに目をとじた
相手がノイズなら殺されても仕方がないからだ
しかしその剣は精霊達によって止められる
「なんで?」
『ダメェ!!!』
『殺しちゃ駄目なの!!!』
俺は初めて見る妖精達を茫然と見た
“視る” 能力が無い者には、精霊の姿は見えないのだが、上級の精霊はそんな者にも姿を見せることができるとノイズに聞いたことがあった
姿を見せるということは、それだけ本気を出しているということなのだと…
「……なんで守るんだ?」
精霊達が本気で俺を守っていることにショックを受けたのだろう
魔法が解けて剣が消えた
『私達、精霊王から聞いていたの…。魔王は重い罰を受けて人族に生まれ変わったと…』
『罰は今も続いてる。自然の死が訪れるまで許されない』
その言葉に俺は俯いた
脳裏に浮かぶのは、忘れたくて忘れたくない、アイツとの本当の最期の別れ…
「………どういうことか教えてくれるよな?」
ノイズの言葉に、俺は砕けた氷の破片を手に取った
そこにうつる俺の顔と彼女の榛色の瞳から逃げるように、目を瞑りノイズに語った
俺の罪と罰を…
-おまけ-
ーツバサsideー
「書記様は保健室に連れて行くとして、この重要書類どないしよう?このまま俺達が持っていてええもんでもないと思うし…」
集めた書類を見て呟くと、書記様の様子を心配そうに見ていたクリアが此方に顔を向ける
「生徒会室に持って行った方がいいだろう。俺が持っていくから、ツバサはクウを保健室に連れて行ってくれ」
「え?ほんま?」
てっきり書記様の側を離れないと思っていた俺は、少し驚き聞き返す
クリアはニコリと天使のような笑顔で書類をギュッと抱きしめた
「クウをこんな目に合わせた愚か者に挨拶しに行かないと…。クウは任せた」
背に冷や汗が流れているように感じる
なんか目がすわっとるように見えるのは気のせいか?俺の目が疲れてる?
書類を抱きしめすぎてギギギと微かに紙が歪む音がしとるのは、幻聴か?
「く、クリア…(汗)」
「行ってくる」
「は…は、はやまるなぁぁあああ!!!クリアぁぁあ!!」
凶器を隠し持ってないか何度も確認して送り出した…
なんも起きないとええけど…不安だ…
……その不安は見事に的中した
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