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「お前は誰だ?それに此処は…あの世なのか?それならアイツは…彼女は何処にいるんだ!?」
もし此処があの世なら、漸く彼女に逢える
興奮を抑えつつ聞く俺に、黒フードの青年は首を傾げた
「此処はあの世で大正解。…そんなに死ねて嬉しいか?」
「当たり前だ」
「へぇ」
黒フードの青年は優しげに微笑んだ
その微笑みに何か引っかかりながらも俺は、一番知りたい事を聞いた
彼女の居場所を…しかし、黒フードの青年は言った
「此処にいるじゃないか」
しかし周りを見渡しても誰もいないし、何もない
白い空間があるだけなのだが、何回聞き返しても此処にいると一点張り
「…俺は真剣に聞いてるんだ。からかわないでちゃんと答えろ」
からかわれていると思った俺はイライラしながら言った
しかしフードの青年はトンと俺の胸を軽く押し答える
「だから教えてやっているだろう。ここに居るじゃないか」
「っ!いい加減にっ!」
軽くキレた俺は胸倉を掴む
その衝撃でフードが外れた
そして気づいた…いや、気付いてしまった
フードが外れた彼の顔が瓜二つだった事…そして、瞳に映る俺の瞳の目の色に…
「知ってるか?魔人の魂は強い負の感情から理から外れてしまった魂で、死んでも転生の輪の中に戻ることはできないんだ。ただ塵となって消えるだけ…カワイソウだと思わないか?」
血のように赤い瞳が嗤う
「さて問題です。そんなお前の魂が何故塵にならずに此処にあるのでしょう?」
緩んでいた俺の手を振り解き左目の下を撫でる
その瞳だけは、彼女によく似た榛色の瞳に変わっていた
「なんでって…」
「正解は、お前の大好きな彼女の魂を使って、理から外れる前の魂に作り直して貰ったから」
魂を補った…つまり彼女にはもう二度と逢えない…?
青年は、絶望に崩れ落ちる俺に目線を合わせた
「言った筈だ。…死んで楽になれると思うなよ」
**********
ーノイズsideー
「そして俺は人族への憎しみを抱いたまま人族に生まれ変わった」
俺は腕を組んで考えた
頭がおかしくなったと思われても仕方ない話だ…が、嘘をつけない妖精が頷いているので本当の話なんだろう
「そいつは何者なんだ?」
『私達の神だよ』
精霊達の言葉に、俺は耳を疑う
「神様は本当にいたのか…いや、転生した時点でいるのかもとは思ってはいたが!」
後頭部をグシャグシャにする
信じられない情報ばかりで、頭の中がキャパオーバーだ
「許されるとは思ってない。気がすむまで俺を切り刻むなり、なんなりすればいい。俺は全て受け入れる」
魔王は覚悟を決めたような顔で俺に言う
しかし今は何かしようとは思えなかった
同情ではない。殺意は一旦途切れてしまうと、再び抱くのは難しいのだ
「俺を捨てた事に関しては、勇者をけしかけ殺させた時点で終わらせている。だから…もういい」
あの時の事を思い出すと許せないと思ってしまうが、もういいと思っている自分もいた
そんな自分がいたからこそ、渋々だがクウを許す事ができたのだと思う
終わった事をずっと引きずっているのは疲れる
ただでさえ勇者にいつ見つかるかとヒヤヒヤしているというのに…
だから自分に言い聞かせるように言ったのだが、俯いていたせいで、ニヤリと魔王らしい笑みを浮かべたことに気づくことができなかった
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