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「俺の名前はクリアと言います。あぁ、貴方がたのお名前を聞くことはしませんよ。風が困ってしまいますから」
どうしてこんなことに…
ツバサは遠い目をした
約1時間前…
ツバサを連行する様にして食堂の扉を開くと、一瞬食堂が静まり返り…
「おっと、忘れてた」
マオがパチンと指を鳴らした瞬間、空気が遮断され、外の音も遮断された
「もう少しで耳がやられるところだったな」
危ない、危ないと笑うマオを見て、漸く何が起こるところだったのかを2人は理解した
そして思い出すのは、入学式の生徒会役員を紹介された時の生徒達の反応と苦痛…
なんか思い出すだけで、耳が痛くなってきた
今遮断された外は、生徒会を見たことの興奮で絶叫が響いているのだろう
「流石、抱きたい、抱かれたいランキング上位者」
思わずポツリと呟くと、クウリもマオも嫌そうな顔をした
2人もこのシステムに不満を抱いているのだろう
まぁ、顔で決められたくないよなぁ…気持ちは分かる
生徒会専用の2階にあるラウンジに入り、テーブルに座る
すると、マオはツバサにお茶をくんでくるように頼んだ
「え?」
クリアは眉を顰める
お茶を汲むには、ラウンジを出て一階の一般生徒用の食堂に行かないといけない
そりゃそうだ。何故ならラウンジと一般では、待遇が違う
一般では先ず食券を買わなければいけないし、券の枚数が決まっている為、人気メニューなんかは争奪戦となる
勿論飲み物は生徒自身が汲んでこないといけない
しかしラウンジではタッチパネルで注文ができ、人気メニューが売り切れていても時間はかかるが作ってもらえる
しかも飲み物もタッチパネルで頼めるので、頼む必要は無いのだ
「はーい。んじゃ、行ってくるわ」
何かを察したツバサは、ありがとなとクリアの頭をグリグリ撫でると、お茶を汲みに出て行く
不満を代わりに言おうとした事を察しての行動だった
何か気に入らず、唇を尖らせ、ぐしゃぐしゃになった髪を撫でる
「…お茶、頼めば出てくるんじゃ無いのか?」
「あぁ、そうだったなぁ」
惚けるフリをするマオを軽く睨む
「ツバサを追い出したかった理由は?」
「生徒会一員になるからには色々知っていた方がいいと思ってな」
それって…
ピンときたクリアはもしかしてと口に出す
「転校生に恋をして仕事放棄した馬鹿どもの話?」
「正解。よく知ってるな」
「理事長から聞いた」
なるほどなぁとマオはニヤリと笑う
…その悪そうな笑み、心臓に悪いからやめて欲しい
そっと顔が熱くなってないか確かめる
うん…大丈夫だ
内心ほっと安心していたクリアは、次の言葉に目を見開いた
「その転校生、俺を見て開口一番にこう言いやがった。会いたかった。僕の魔王様ってな」
「……………あ“ぁ??」
途端にクリアから鋭い魔力が溢れ、パキンっとテーブルに大きなヒビが入る
「「あ」」
これには見守っていたクウリも思わず声を出す
しまったぁ〜
クリアの頭の中で弁償の2文字が浮かび、思わず額に手を当て背もたれに寄りかかる
マオを見ると、まだ笑っていた
それにムッとしつつ確認する
「…狙っただろう。嫌な奴」
「そんな俺は嫌いか?」
「胸のトキメキが止まらないよ!馬鹿!」
もう最悪だ!…一応Mではないことを言っておく
弁償もそうだが、あのビッチ姫も生まれ変わったと言う事実に吐き気がした
「というか、誰が僕のだ。また呪ってやろうか。…いや、そんな事よりも念の為に聞くが、またあの姫に」
「止めろ。あの時の俺は正気じゃなかった。あのクソビッチをあいつと思い込んだ事に不快感を覚える」
クリアの言葉に眉を顰めてピシャリと言い放つ
クウリも似たような顔をしていることから、同じことが起こることは無さそうだ
それを見て、すうっと怒りが消失する
「ならどうでもいいよ」
ノイズが姫に怒り呪いをかけたのは大事な仲間に手を出し心を弄んだからだ
今の仲間が同じように心を弄ばれないのであれば、どうでもいい
「お茶持ってきたで。…あれ?このテーブルってヒビあったか?」
ここで漸く戻ってきたツバサは、テーブルを見て首を傾げた
まさか、ちょっと頭にきてやっちゃいましたw…なんて言えない…
「「「………」」」
3人は、示し合わせたように一斉に、たった今気づいたかのようにヒビを見る
「ヒビ?確かにあるな」
「危ない…。違うテーブル、移る?」
「そうだね。そうしようか」
そして阿吽の呼吸で誤魔化した
このテーブルは大理石だ…弁償できるか不安なのだ(マオは大理石の中で特に希少な石であると分かっており、壊したとバレたら少し面倒だから誤魔化した)
そして違うテーブルに移った4人は、料理をそれぞれ注文し、ツバサが持ってきてくれたお茶を飲みながら今後の動きを話し合う
補佐にクリアとツバサがなったが、副会長、会計、庶務がいないことは変わらない
「戻ってくることは正直言うと無いだろう。というか期待してない。周りからは仲間と認識されてはいるが、仲間ではない微妙な位置にいることは断言できる」
だから、壊すなよ
そう伝えてくるマオの視線に、クリアは苦笑する
仲間に執着を持つクリアが、マオとクウリを苦しめた奴らを仲間と認められるわけがない
敵よりも裏切り者には更に容赦のなかったノイズのことだ
ここでまだ仲間だとマオが認めれば、仲間を傷つける裏切り者と認識して、マオとクウリが困らないように細心の注意を払いながら、えげつない方法で排除しようと動き出すだろう
今後改心すれば仲間として迎えるが、今は仲間ではないと伝えることで、クリアの暴走は最小限に食い止められる
そう判断して、マオは敢えて言ったのだ
だからこその苦笑…
マオは俺のこと、よく理解してるなぁ〜
なんか少し気恥ずかしいような、嬉しいような複雑な気持ちだ
クリアは大丈夫だと伝えるように、手をヒラヒラと振った
「なら自分はリコールした方がええと思うんですけど。したらまた機能するし…」
ツバサの提案に、マオは首を横に振る
リコールとは役員をクビにし、新しく生徒会役員を選び直すものである。確かにそうした方が早いが…
「誰が教育するんだ。今のあいつらがまともに引き継ぎできると思うか?ただでさえギリギリなのに、一から仕事を教えられるわけがないだろう」
普通リコールされた元役員は、新しい役員に仕事をしっかり教えないといけない
しかし、そもそも引き継ぎができるのなら、こんな事にはなっていない
リコールすると、従来の役割+他役員の役割に新役員の教育も入ってくるのは確実だった
だからこそ耐えていたのだが、昨夜、クリアとツバサが補佐として生徒会に加入した事で状況が良い方に変わった
今まではマオが会長、副会長。クウリが書記、会計、庶務の仕事をしていたのだが、実際に2人に仕事を振ってみて、クリアは副会長と庶務を、ツバサは会計と庶務の仕事を任せられると分かったからだ
「お前達が仲間になって、本当に嬉しいよ」
マオの言葉に、ツバサは顔を赤くし、クリアはキョトンとした後、泣きそうな顔で笑った
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