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クリアは、失礼と一言いうと、マオの前に進み出た
「…なんですか、貴方は?」
「俺の名前はクリアと言います。あぁ、貴方がたのお名前を聞くことはしませんよ。風が困ってしまいますから」
顔を上げてニコリと笑う
あの時、顔が整っているが平凡に見える顔に、クリアは可能性を見出した
平凡顔は周りに溶け込める。しかし整った顔立ちならば、少し服装や髪形を弄るだけでかなり変わる
そのことを把握していたクリアは、日々鏡を見て、研究した
平凡を生かし、存在感を薄くする方法…。そして、自分が有利に進めたい時にだけ、平凡に隠れた整った顔を生かし突然魅せる方法を…
それが天使の笑顔である
今まで見えていなかった心を惹きつける存在が突然目の前に現れるとどうなるか?
役員達とリウは怒りを忘れ、ぼんやりとクリアの笑顔に魅入った
「会長の言う通り、光の神が気に入るほど素敵な方々ですね!ね、会長!」
「…あぁ、そうだな」
くるりとマオ達の方を見たクリアは、人差し指で顎の下に触れ軽く小首を傾げる
そして微かに動いた目線の先で、瞬時にクリアの意図を理解したマオは笑って同意する
「成る程」
クウリも分かったようで、ふふっと笑い、遠くでオロオロと見守っているウェイターを呼んだ
呼ばれ恐る恐る近づくウェイターを見て、クリアは嬉しそうに、そうだ!とパンッと両手を合わせる
「まだ授業まで時間ありますし、皆さんにご馳走させてください!デザートがいいかなぁ?どんなのが良いですか?」
「何言ってー「…父様。これ…好き…」
戸惑う会計を遮り、クウリが1番高いフルーツが沢山のったロールケーキを指差す
このロールケーキは、生徒会役員全員が好きで、かつてよく息抜きに皆で頼んで食べていたケーキだった
「そうなんだ!じゃあ、それを。ウェイターさん、今すぐ出せる?」
「だ、出せます!」
「それじゃあ、それを5人分で」
「か、かしこまりました!」
「こんな高いのをご馳走してくれるなんて、お前いい奴だな!!」
ころりと手の平を返すリウには呆れて苦笑いしか浮かばない
「あ、でも!自分は補佐だって嘘ついちゃダメだからなっ!」
「嘘?」
首を傾げるクリアに、自信満々にリウは断言する
「そうだぞ!なんて言ったって、補佐になるのは俺だからなっ!生徒会には俺が必要なんだっ!!!」
…この宇宙人は、マオの話を聞いていなかったのだろうか?
しかしクリアはそんな事口に出さず、ただただ笑顔を浮かべ続ける
「そんな事を言うなんて、本当に木々の歌声をかき消してしまう程に楽しい人ですね!」
「…お前、やたらと俺のことを褒めるなぁ。そんなに友達になりたいのか?」
「そんな!貴方がたと隣人になるなんて恐れ多いです!」
「…お、お待たせしましたぁ」
ウェイターがクウリが指定したテーブルにデザートを置く
先程クリアがヒビを入れてしまった例のテーブルに…
「兎に角、補佐はこいつらで決まりだ。どうしても納得がいかないなら後日お前らの言い分を聞いてやる。もう昼休憩残り僅かだぞ。可愛い後輩が奢るって言ってんだ。まぁ食えよ」
ほらと席を引くと、嬉々としてリウがその席に座る
「マオの言う通りだぞっ!!折角ご馳走してくれるんだから食べようぜっ!!!」
「リウがそう言うなら…」
リウの言葉に逆らえない他の役員達も席に着きケーキを食べ始める
「んじゃあ、まだ早いが教室に戻るか」
片付けをウェイターに任せてバルコニーを後にするマオ達だが、ふとクリアは足を止める
そんなクリアの様子にケーキを食べていたリウ達は手を止めてクリアを見る
その周りを妖精達がクスクス笑ってクリアに手を振っていた
「あ、そういえばリウ先輩。貴方に伝言をもらってたんです」
「伝言?俺に?」
「…お久しぶりです、私の事覚えてますか?貴方のその素敵な笑顔がこの先も続くよう祈っています」
その言葉はかつて魔王を倒した後に、救出された姫にかけた言葉だった
その後に例の呪いをかけられている
前世を覚えているなら忘れられない言葉となっている筈だ
「………え?」
「では伝言を伝えました。貴方がたに、光り輝く祝福がありますように。ではさよなら」
ひ・め・さ・ま
固まる転校生にダメ押しにと口パクで言葉を紡ぐと、そのままマオ達の後を追う
お待たせと待っているマオ達に駆け寄った瞬間
「あぁーーー!!!!」
という転校生の叫び声と共に、テーブルを思いっきり叩き立ち上がる音が聞こえる
そしてその直後、バキッ!!ゴガチャン!!という何かが折れて倒れる音と、ウェイター含めた複数の悲鳴、そして副会長達の超貴重な○○○○のテーブルがー!!!という絶望的な声が響き渡る
ブハッとクウリは吹き出した
ツバサもなんとなく何が起こったのか理解したのか、苦笑いを浮かべていた
必死に笑いを堪えていると、マオが大笑いしながらクリアの頭をワシワシと思いっきり撫でた
そしてそのまま肩を組み顔を寄せる
「狙ったな。嫌な奴」
「そんな俺は嫌い?」
元魔族らしい邪悪な笑みを浮かべるクリアに、マオも同じ笑みを返す
「最高だ」
そして騒然とする食堂を笑いながら後にしたのだった
ーオマケー
「しっかし、あいつら完全に妖精達に敵対視されたな」
愉快愉快とケラケラ笑うマオとクウリに、ツバサは意味が分からず首を傾げる
そんなツバサにクリアもクスクス笑いながら説明する
「俺はな、妖精達の言葉を人族の言葉に変換して話してたわけ。つまり一つ一つ意味を説明すると…」
俺の名前はクリアと言います。あぁ、貴方がたのお名前を聞くことはしません。風が困ってしまいますから
↓
俺の名前はクリアと言うけど、お前達は名乗らなくていいから。聞きたくないし、知りたくもない
会長の言う通り、光の神が気に入るほど素敵な方々ですね!
↓
(光の神は闇の神を慕う精霊達にとって、嫌悪の対象。つまり、お前らのこと好きになれない。というか嫌い。という意味になる)
そんな事を言うなんて、本当に木々の歌声をかき消してしまう程に楽しい人ですね!
↓
そんな事を言うなんて、本当に不愉快な奴等だ(木々の歌声をかき消すことは妖精達にとって最もやってはいけない不作法となる)
そんな!貴方がたと隣人になるなんて恐れ多いです!
↓
お前達と良い関係になるなんてお断り!
「そしてとどめに、貴方がたに、光り輝く祝福がありますように…だ」
キョトンとするツバサに苦笑し説明する
「光り輝く祝福は光の神の祝福があるようにということだ。一見嬉しい言葉だと思うだろうが、妖精達にとっては嫌悪の対象な為、お前達は俺の敵だ。って意味になる」
そしてその祝福の言葉を贈ったのは闇の神の愛し子であるクリア
「俺、妖精達にかなり好かれているから、これから大変だろうなぁw」
「なにが?」
「妖精達に協力を仰げなくなる」
通常、魔法を使う時は自分の魔力+相性の良い妖精達の力を借りる
でないと、すぐに枯渇して危険な状態になるからだ
大きな魔法を放つとなれば尚更協力は不可欠
しかし協力を仰げなくなれば、自分の魔力だけで魔法を使用し続けなければならない
そんなの妖精王の息子であった魔王でも無理だ
さて、魔王でも出来ないことをあいつらはできるのだろうか?
可哀想にと呟くクリアの口元は愉快そうに笑みを形作っており、ツバサはそんなクリアを見て、怒らせていけない人を怒らせたんだと理解する
そして役員達とリウに向けて心の中で手を合わせたのだった
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