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7話 人は中身よりも見た目を選ぶ
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ある日のこと、痺れを切らしたクウリが、鋏を手にノイズに迫っていた
クウリが訴えたいことは分かっている
しかし、ノイズは抵抗しようとキッとクウリを睨み上げる
「…イメチェン…しよう?」
「断る」
生徒会役員となり、早くも一ヶ月経った
漸く生徒会補佐の仕事も慣れ、生徒達にも認められ受け入れられてきた…しかしそれはツバサのみである
あの騒動から恨みを抱いた生徒会役員とリウ達がクリアのあらぬ噂を立てまくり、クリアの評判はかなり低かった
マオと理事長が推薦したこともあり、補佐に就任した事に反対を唱える者はリウを除いていなかったが、陰では不満と悪口が飛び交う
勿論、あのお騒がせなリウの言葉を信じているのは、惚れ込んでる一部の生徒のみ
では何故評判が悪いのか…それは、簡単に言うと嫉妬である
生徒会補佐はランキングに関わらず、生徒会か理事長が推薦した者しか就くことができない(定員2名)
つまり補佐になれば、生徒会役員という肩書きが手に入り将来が有望視されるだけでなく、抱かれたいランキングの上位者と一緒に過ごすことができるのだ
全校生徒、それはそれは選ばれようと必死にだった
それなのに入りたての1年で、平民が2人も選ばれた
ツバサは平民だが顔は整っているし、入学成績も上位だから渋々認められたが、クリアはぱっとしない平凡顔
しかもクリアは無理やり理事長に入学させられた為に、入学試験を受けていなかった
ふざけんなよ!…と誰もが思った
結果どうなったかというと…
バッチャーン
教室に向かう途中、突然降りかかってきた水にクリアは立ち止まる
すると、後ろの方で慌てて去っていく足音が聞こえた
絶賛、制裁されてます
「…全く」
呆れながらもクリアは空中に止めていた水を脇に投げ捨てる
風紀委員が見回っているだろう日中に、白昼堂々と制裁をしておきながら、結果を見ずに逃げていく…豪胆なのか臆病なのか分からない
「おまたせ!…って、なんでここだけ濡れとるんや?」
「気にするな。早く行くぞ」
「あ、あぁ」
タイミングよく来たツバサに、クリアは何事もないように振る舞い教室へと急かす
水をかけられたと言ったら、昨日のクウリのように煩く言われるからだ
しかし…
「制裁される所を見たくない。見た目を変えてくれ…か…」
クリアは平凡だが綺麗に整っており、肌が雪のように白いからか、黒い瞳は目をひいた
更に体つきは全体的に華奢で、腰とかエロい…と、妖精達に言われている
なので今は、わざと前髪を長く伸ばし、目を少し細めて瞳を目立たないようにし、制服もきっちりと着ることで、肌の露出を限界まで隠している
その為に一見、頭の固そうな陰気な優等生にしか見えない
それをやめれば会長達と並んでいても違和感ないくらいにまで化けるだろう
しかしそうなると、周りが掌を返すようになる事が容易に予想できる
クリアにとって、キャーキャー騒がれるより、ヒソヒソ嫌味を言われる方が遥かにマシだった
教室に入ると、一斉に気まずそうな視線が集まる
なんなんだ?と思ったクリア達は、机を見て納得した
クリアの机には理事長に足を開いた恥知らずだの、一体何人その貧相な身体で落として来たんですか〜?といったは罵詈雑言がデカデカと殴り書きされており、更に菊の花を生けた花瓶が置かれていた
「な、なんやこれっ!?誰や一体!!!」
ツバサが怒鳴るが、誰一人、目を合わせる者はいない
それに憤慨し、ギャーギャー騒ぎ立てるツバサを無視し、クリアは呟く。
「…これは酷いな」
そして手を菊…ではなく、その花弁の上でシクシク泣いている花の妖精に差し伸べる
『愛らしい隣人、泣かないで』
『あのね、酷いの。このお花、私のお気に入りだったの…』
『そっか、じゃあ力を貸してあげる』
髪を2本ほど抜いて妖精に渡す
『いいの?』
『我等に仇なす愚か者には、それに相応しい悪戯を』
『…愛し子、ありがとう』
涙を一粒流すと、嬉しそうに笑う
そしてフワッと浮かび消えた
「もうええ!!この机は俺が片付ける!」
「そんな怖い顔をするな。俺は大丈夫だから」
怒りながら机を変えようとしてくれるのは嬉しいが、もうそろそろ始業の鐘が鳴る時間だった
しかしツバサは諦めない
「こんなことされて大丈夫な訳ないやろ!!」
「そっか…うん、そうだよな」
仲間が酷いことをされて怒らない者はいない
胸が暖かくなり、自然と笑みが溢れる
「なら、こうしたらいい」
クリアは花瓶を退けると、歌うように唱えた
【シーフよ踊りて削れ。軽やかに靡くリボンのように。薄く広がる陰葉のように】
そしてさっと机の表面を撫でる
すると、一瞬で文字が消えた
いや、消えたわけではない。床には透き通るほどに薄く机の削りカスが落ちている
これでよし!と満足げに席に着くクリアに、なにやら顔色の悪いツバサが恐る恐る聞いた
「そ、それは?」
「昨日本で読んだ呪文の一つだ。少しアレンジしてみた」
「…昨日読んでいた本ってなんやったっけ?」
「手軽で簡単!暗殺者が生み出した暗殺に役立つ呪文集?」
「誰やぁ!!こんな物騒なもん扱っとる阿呆はーー!!!」
叫ぶ理由が分からず、クリアはただただ首を傾げる
そんな一部始終を見てしまったクラスメート達は、このクラスの平和の為に、何としてでもクリアを守らなければならないと悟り、決意を固めるのだった
そんな心境も知らず、クリアは次々と行われる制裁を黙って受け続けた
廊下ですれ違う度に転ばせようと足を差し出してきて(うっかりを装い、思いっきり踏んづけてやった)
教室に教材を運ぶのを頼まれて、その教室まで行けば、黒板消しが落ちてきて(両手が塞がっていたクリアの為に、ツバサが開けたのでツバサに当たった)
トイレに行けば、なにやらニヤニヤした集団が入ってきた(前髪をピンで留めて、上目遣いで頬染め、「見ないで♡」と言ったら鼻血を出して逃げていった)
そしてクリアは思った
「めっちゃ楽しい!」
「楽しむなや!!」
ツバサがベシッと突っ込み、クウリは困ったように眉を顰める
唯一マオは目を細めて笑っていた
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