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それが起こったのは放課後の特別メニューに担任であるアカツキも参加するようになった1週間後のことだった
「お前、武器の適正が無いんだって?」
ツバサにスポーツドリンクとタオルを渡され教室から出ると突然前を塞がれた
怪訝そうな顔で見るクリアに、他クラスであろう生徒数人がニヤニヤと馬鹿にしたような笑みを向ける
「なんの武器も持てないとか、お前恥ずかしくないわけ?子供でもナイフぐらいは振り回せるっての!」
「子供でもできることができないとか、俺なら恥ずかしすぎて学園にこれないわぁw」
「此処はあの勇者達が建てたヒルフェ学園だぞ?なんでお前みたいなのが入学できたんだ?」
「しかも生意気にも生徒会補佐様ときた。いいよなぁ!入学試験も受ける必要もない特別生は!!」
「…えっと……。何が言いたいのか分からないんだけど?」
クリアが首を傾げた瞬間、顔スレスレに何かが飛んできて壁に当たった
それは拳大の石だった
勿論呼び止めた生徒が投げたのではない
傍観者となっている生徒の誰かだ
しかしその生徒を咎めるばかりか、どの生徒も冷たい視線をクリアに向けている
また何処からか石が飛んできて、身体のすぐ横に思いっきりぶつかる
その状況に、ツバサは顔を青くした
とうとう恐れていたことが起こってしまったのだ
試験を受けずに入学したばかりか、Bクラスに振り分けられ、更には生徒会補佐にもなった
その不満にクリアは虐められていたわけなのだが、どれも怪我をするレベルのものではなかった
それは風紀委員の見回りの強化と、生徒会長であるマオがクリアを大切な生徒会の一員だと宣言をしてくれたお陰であった
しかし、今回武芸の適正がないことが全員に知られてしまった為に、護りきれない程に鬱憤が高まってしまったのだ
クラスメート達に見せたように、魔力を見せる機会があればまぁ収まるかもしれないが、廊下では魔法は禁止されている
教室の中に戻らせてくれるような雰囲気でもないし、だからと言って証明のために魔力を使ったら、今度は学園のルールも守れない者が生徒会に在籍していることを咎められる可能性が高い
八方塞がりだった
「…貴方達の言い分はもっともです」
クリアが口を開いた
「俺が此処に入学できたのも、全て魔力が高かったからなんです」
そう言いながら取り出したのはギルドカード
ギルドカードには魔力EXと記載されていて、見せられた生徒は一様に口をあんぐり開けた
「それに…筆記試験は一応受けているんです…」
うりゅっと大きな瞳に涙が溜まり、クリアは下を向いた
静かにぽろぽろと涙を落とす姿は罪悪感を抱くほどに可哀想に見え、今まで一緒になって非難していた筈の冷たい視線が、クリアから立ちはだかっている生徒達に移動する
そんな視線に彼等は慌てるが、最初に始めた為に引っ込みがつかなくなったのだろう
ギルドカードを取り上げ、せせら笑った
「魔力EXだぁ!?そんな奴居るわけねぇだろうがっ!!どうせ偽造カードだろ!?」
「あ…でもこれ本物だぞ」
「なぁ!?…だっ!だとしても怪しいな!生徒会長だけに留まらず学園長にも股、開いてんじゃねぇの?なんせ学園長はギルドのトップだからなぁ!!」
「……はぁ?」
クリアの周りの空気がパリッと電気を帯びる
(はい、アウトー!!)
ツバサは心の中で叫んだ
あまりの侮辱だ
クリアだけでなく、生徒会長や学園長まで貶してしまっている。これは流石に生徒会一員としてムカついた
正直やっちまえ!と応援してしまいそうになるが、クリアのことを思うとそうしてはいられない
クリアを排除したい者達にとっては、理由なんてどうでもいいのだから
しかし、どうやって止めるか…?
キレかけているクリアをどう宥めるか悩んでいると、ふとあの時の生徒会長の言葉が頭に浮かんだ
−あいつには、お前のせいで俺達が傷つきますアピールした方がきくんだよ。−
ツバサは咄嗟に片目を抑えて言った
「あーしまったー。目に睫毛がはいってもうたー」
緊迫した空気の中、ツバサの全力の棒読みが響き渡る
何やってんだこいつ?
と誰もが思った
ツバサも周りから感じる視線から気づいてはいたが、止めるわけにはいかない為、続ける
もうヤケクソである
「あー痛いー。痛すぎるー。失明するかもしれんー!」
共感性の高かった生徒が数人、羞恥心から顔を抑えて蹲ってしまう
そうであろう。ツバサも今すぐそうしたかった
「大丈夫か!?!?」
そんな中、ツバサに駆け寄ったクリアは、ガシッと顔を掴み目を覗き込む
(あ、改めて見るとほんまかわえぇ顔しとる…)
長い前髪から現れた顔に一瞬羞恥心も忘れて見惚れたツバサだったが、すぐにハッと我に返り、痛いふりを続ける
「ほ、保健室ー。保健室へー」
「わ、分かった!!」
「おい待てよ!!!」
生徒の1人が、慌ててクリアの腕を掴んだ
バチンッ!!
「いたっ!?」
電気がはしり、掴んでいた生徒は慌てて手を離す
クリアはキッと睨みつけて怒鳴った
「お前達の妄言よりも、ツバサの目の方が遥かに大事だ!!黙っていればよく分からないことをぐだぐだと…!」
クリアは続ける
「そもそもなんで赤ん坊でもないのに股を開かないといけないんだ?とっくの昔にオムツは卒業している!!失礼なっ!!!」
「「「「「ええぇ!?!?!?」」」」」
これにはツバサも声をあげた
「ん?」
不思議そうに首を傾げつつも手を引くクリアに、本気で言っているのだと理解する
(やばいっ!この子、純粋培養や!!穢してはあかんやつや!!!)
ちょっと話が変わるが、その場から離れた場所で風紀委員2名が偶然にも一部始終を目撃していた
「……っ!!……っ!!!」
「………」
崩れ落ち涙を流し、挙句には天に祈りまで捧げはじめた風紀委員長を横目に、副風紀委員長であるスレイはホムラに連絡をとる
「シンが壊れました。威厳とか全てが台無しで目も当てられないので速やかに回収しに来てください」
**********
「……助かったけど、ちょっと演技の練習した方がいいと思うぞ」
「う、うっさいわボケェ!!!」
「ぼけぇ!?」
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