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目を開ければ、白い天井と四分の一程にまで減った点滴の袋が見えた。
どれ程寝ていたのかは分からない。
ぼーっとする頭のまま首を動かして袴田先生を捜してみるけど、カーテンで仕切られたこちら側にその姿を確認する事は出来なかった。
「先生‥?」
小さく呼ぶ声は少し掠れていて、返事は一向に返ってこない。シンと静まり返った部屋には人の気配もしないし、外からの雑音もなかった。
「‥先生‥‥いないの?」
軋む体を起こして先生を捜す。
さっき見たからここに居ないのは分かっているのに、それでも捜さずにはいられない。
無駄な行動
先に帰らないって言ったのに、俺‥置いてかれたのかもしれない。
やだよ‥嫌だ
置いてかないで
ここにいるよって言ったじゃん
薄暗い室内のせいか、病院という場所のせいか、堪らなく心細さが込み上がる。
「っ‥みのっ、稔さっ」
1人にしないって‥言ったのにっ
「稔さんっ‥みっ‥のるさ‥っ」
一粒涙を落としてしまえば後から後から続くように溢れて止まらない。
寝るまで撫でてくれていた稔さんの手が今は欲しくてたまらない。
「みの‥るさんっ‥やだっ‥稔さッ」
呼んだって意味ないのに
何度も何度も名前を呼んで馬鹿みたいだ
居ない事にガッカリして、項垂れて‥馬鹿みたいだ
なのにどうして涙が出るんだろう
どうして‥独りが嫌だと、寂しいと思ってしまうんだろう
綺麗になれない
好きだと伸ばされた手を拒んだくせに、居てほしいと願う我が儘な俺は
真っ直ぐ欲しいモノに手を伸ばす純粋なアンタみたいに、綺麗にはなれないんだ
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