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「永久‥着いた」
「うん‥」
あれから看護師が点滴を外してくれて、稔さんはその間も抱き締めててくれて‥一応病人だしこのままでもいいかな、なんて‥ただ温もりが冷めるのが凄く嫌だったから。
コンビニに寄ってからアパートの前に停車した車。それと、動かない体。
そうじゃない‥動きたくないだけ。点滴をして体は大分楽になったけど稔さんと離れる事を拒否してる。
「先に一人で部屋行ける?」
「‥泊まるの?」
「当たり前だろう?病人一人で放っておくような大人いねーよ」
「‥居るよ」
「俺は違います」
大人であり
社会人であり
そして教師
「‥いい。一人で平気だから‥帰って」
「‥」
「じゃ‥ありがとう。それとごめん」
何も言わない稔さんの目を見れないまま車のドアを閉めて歩き出す。
すぐに車のエンジン音が遠ざかり、足を止めて俯いた。
後ろは振り返らない。
稔さんの車がそこに居ない事は知ってるから。
「帰りたく‥ない」
行く場所なんかないんだ。
誰も居ない暗い部屋は、寂しくて悲しくてどうしようもない。
踏み出した瞬間に吹いた風が体温を奪う。
「住めば‥都‥‥か」
登る度にカンカンと鳴る鉄製の階段は塗装が剥がれて錆び付いてる。
二階の一番端
ここが今の俺の世界の中心。
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