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「永久!もう大丈夫なの?」
「あ゙?あぁ壱か」
「えと‥永久、ご機嫌斜め?」
「‥別に」
月曜日の朝。
登校してきた壱は、俺の前の席に鞄を置きながら眉を下げて聞いてくる。
壱の垂れ目が益々垂れてなんだか俺が虐めてるみたいだ‥
「病院行ったんでしょ?」
「行ったけど?」
「袴田先生と2人で病院大丈夫だった?」
「は?」
えーと。
何で知ってる?
見られたとか‥いやいやそれは無いだろう
「何で知ってんの?」
「え?みんな知ってると思うよ?」
目を丸くして。
当たり前のように言い放つ壱に思考が追いつかないのはきっと病み上がりのせいだ。
「みんな?」
「うん!
だってシンとしてた時にいきなりガンッ!て音してビックリしたよ!あ、顔大丈夫だった?」
「‥顔は大丈夫」
「良かった!振り返ったら永久の顔面が机に突っ込んでてさ!なんかただ事じゃなかったから‥呼んでも目が虚ろだったし意識無くなっちゃうし!」
「‥」
「でさ、袴田先生が保健室連れてくから自習って!永久抱っこして連れてっちゃったから!」
抱っこという単語に思わず顔を引きつらせて頭を抱え込みながら息を吐く。
話しを聞く限りどうやら俺の意識が無いうちにとんでもない醜態を曝してしまったようだ。
「永久!頭痛いの?大丈夫?保健室行く?」
「いや、そうじゃなくて。とりあえず‥ごめん」
「!」
「なんだよ」
「え、あ‥いや?別にっ、全然思ってないから!」
挙動不審に視線を彷徨わせるコイツはなんとも分かりやすい。
「なに思ったって?」
「いや‥可愛いなって‥そのっ」
「‥で、何で知ってる?」
聞いた俺が馬鹿だった‥もう面倒だからスルーで。
「え?あ、ああ‥えーと」
「‥」
「そうそう!授業さ、もう残り時間あんまり無かったから授業時間内に袴田先生戻って来なくて、休み時間桃と様子見に行ったんだよ!」
「‥」
「でね、なんかその日保健室の先生が出張だったみたいで袴田先生がまだ居てさ。病院連れてくから永久の荷物持って来てって」
話を続けながらガタガタと椅子を引っ張り跨いで座る。対面になるように座った壱は俺の机に頬杖を突いて覗き込んできた。
壱の瞳は色素が薄く他の人のそれよりも奥が見えるようで興味が湧いてしまう。髪を染めた見栄えも手伝い日本人離れしたような雰囲気がコイツを造り上げていた。
「だから二往復もしちゃったよ!」
「お疲れ」
「ふふっ」
「で?」
「え?」
「だから、何でみんな知ってるのかって話し」
「ああっ!
HRの時間福ちゃんが言ってた!袴田先生は中村君を病院に連れて行ったのでHRは僕がしますって」
「そこだけ言えよ!」
全くもって回りくどい。
話したかっただけなのかもしれないけど話がいちいち反れてやっと聞きたかった事が聞けた。
というか説明される前にこんな簡単な事俺が気付くべきだった。気に入らないから病み上がりのせいにしておく。
ちなみに福ちゃんとは副担任の福田先生の事で副担の副と福田の福をかけているのは言うまでもない。
「あ!桃おはよおっ」
「いっちーおはよ!
あ、永久!もう大丈夫なの?」
「‥大丈夫」
「良かった!すっごく心配したよっ!あ、おでこ大丈夫?」
「‥大丈夫」
なんだろうこのデジャヴ感‥ああ、ついさっき壱に聞かれたからか。
「そっか!オレビックリしちゃった!ガンって音したから!」
この調子で行くと桃まで抱っこして保健室にとか言いそうだな‥それだけは勘弁して。
とりあえず爆弾投下前に話を反らして回避を試みる。
「そういえば桃今日いつもより遅くない?」
「あ‥うん。二度寝しちゃって」
「朝は眠いよねっ」
「うん。なんか起きたらもゆがオレのベッドで寝てて」
「‥は?」
回避したはずの爆弾は追跡型だったらしく思わず振り返ってしまった。まずいやられる。
「ひっぱたいて起こしたらさ、『起こしに行ったら桃が気持ちよさそうに寝てたからつい』とか言って!」
「え~‥つまりぃ‥二度寝したのは弟君で、一緒に寝てたの?」
「そうゆーことっ!」
「‥やるなあ」
「何か言った?」
「いや何も」
「そう?」
「はい、席つけー」
会話を遮るように鐘が鳴りズカズカと先生が教室に入って来る。
「じゃあね!」
それを合図に散らばっていた生徒が席に戻り桃も自分の席に走って行った。
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