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「おー永久!元気にしてたか」
「爺ちゃん」
「どうしたよ、連絡もよこさねーで」
爺ちゃん婆ちゃん家の玄関先、ピンポーンと鳴らそうとした瞬間に爺ちゃんのお出まし。
あれから逃げるようにアパートを出て、朝一の電車で此処に来たという訳だ。
「ごめん急で。どうしてるかなと思って」
「どうしたもこうしたも‥昨日タンスの角に小指ぶつけてよー」
「そりゃ痛いわ」
「じゃろー?まあ入んなー」
「うん。
あ‥ねえ泊まっていい?日曜には帰るから」
「ええよええよ、ゆっくりしてきー」
今日は金曜日
1日‥休む事になったけど、まあ1日くらい大丈夫だろう。
「あら永久ちゃん!学校さぼりかい?」
「まあ‥そんなとこ」
「まあまあ‥そりゃ仕方ないね!来月なったら一周忌だから急がなくても会えただろうに」
そう、仕方ないんですよ。
でもなんだかんだ言ってさぼって会いに来た俺を見る目は嬉しそうに笑ってる。
「お茶飲む?」
「ああ‥俺やるよ」
「じいちゃんのも入れてな」
「はいよー」
優しく穏やかな祖父母といると小さい頃の事を思い出す。よく遊びに来ては爺ちゃんに怪獣役をやらせて倒してた‥そんな時期もあった。
家の匂いが思い出を呼び起こしていく。
「はいお茶ー」
居間で待つ2人にお茶を出して自分も腰を下ろす。
「おうおう。永久の茶はばあちゃんのより旨いから冷めないうちに頂いてしまわねーと」
「じゃあこれからは永久にお茶を入れてもらって下さいな」
「おー拗ねよった」
「同じ茶葉だから同じ味だよ」
歳を重ねるうちに爺ちゃん婆ちゃんの家に行く回数は徐々に減った。爺ちゃんも婆ちゃんも歳を‥取ったと思う。
あの日以来‥1、2ヶ月に一回はこの家に足を運んだ。
俺自身、精神的に病んでいたけど爺ちゃん婆ちゃんだって悲しかったんだ。
俺なりの心配だったし、素直に会いたいと思ったから。
爺ちゃん婆ちゃんはそんな俺をいつも笑って出迎えてくれる。
「で?」
「‥え?」
「桃ちゃんと壱ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「お、喧嘩かー。殴ったか!ん?」
「別にそんなんじゃないよ」
「そお‥2人は元気?」
「元気だよ。あ、そういや壱も足の小指ぶつけたってひぃひぃ言ってたな‥」
「そりゃ痛いなあー」
葬式で色々手伝ってくれて‥俺の側に居てくれた友人を爺ちゃんと婆ちゃんはちゃんと覚えていてくれる。
「それじゃあ喧嘩は稔さんとかねっ」
「な、何でそうなるんだよ!」
「顔に書いてある」
「嘘つくなよっ!」
書いてないのは分かってるけど思わず顔を触って確かめる。
爺ちゃん婆ちゃんに迷信とか言われたら本当っぽく聞こえるアレだよ
「ふふっ。
喧嘩する程なんとやらってね。アンタ稔さんと結婚するんだろ?」
「ぶっゴホッゲホッん゙‥っはあ!?」
思わず啜っていたお茶を詰まらせる。
そりゃあそうだろ、稔さんと結婚って‥もうどこから突っ込んでいいか分かんねえ。
「あれ‥違うの?稔さんによろしくお願いしますって頼んじゃった」
「あ゙ー‥担任だからだろ?」
「それもあるけど‥でも、顔に書いてあったよ?永久が好きだって」
「気のせいだろ」
「えぇ‥必ず幸せにしますって言っとったよ?」
クソっ
んな事聞いてねえし!
余計な事ばっか言いくさりおってあの変態教師め!
もう言い訳効かないじゃねーかっ
「‥それ、いつの話し」
「えーと、お葬式の少し後かなあ」
「‥そう」
「稔さん、よく連絡くれるよ?永久の事凄く気に掛けてくれてるし、少し前は‥一周忌のハガキ出したから必ず伺いますって電話来てね‥何かお手伝いできませんかって」
俺が‥
ぼーっとしてる間に先生は爺ちゃん婆ちゃんと連絡を取り合い色々世話を焼いてくれた。
先生が爺ちゃん婆ちゃんと今までどんな話しをしてきたかなんて知らなかったけど、どうやら葬式以降も結構交流があったらしい。
先生らしいと言ったら先生らしい。
そういう事にはマメで抜かりないんだ。
「そんな顔してんだったらさっさと仲直りしちゃいなさい」
「‥うん」
ごめん
でも
もう仲直り‥出来ないんだ
もう‥戻れない
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