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「今ーこそぉ、別ーれめー‥いざーさらーばぁー」
本日二回目の仰げば尊し
只今カラオケ中
「うっうぅ‥」
案の定
卒業式で泣きやがった壱は何故かカラオケで号泣しながら熱唱。
「馬鹿じゃね?」
「な゙っ何でよっ!」
「聞いたんだから十分だろ」
「聞いてたら歌いたくなったんだもんっ」
「じゃあ泣きながら歌うなよ」
カラオケで仰げば尊し歌うやつなんて居な‥あぁ、ここに居たんだった。
「でも泣ける曲だよねっ」
「ねーっ」
「‥まあ‥な」
相槌を打った途端、2人の自然がバッと俺に集まった。
「え、な‥何?」
「永久も思ってたんだねっ!オレ、感動っ!」
隣でコクコクと頷く桃
「なんか失礼じゃね?」
「卒業式泣いた?」
「泣いてねーよ。
ただ‥いざさらばってとこが、こう‥さようならって言うより響くっていうか」
「‥」
「さよならって誰かに言う感じだけど‥なんか自分的だよな。自分の中の思い出とかが溢れる。他人目線じゃなくて他人に対してじゃなくて自分自身が‥ここに居た自分自身に、その日々にさらばって‥言ってる気がする」
「‥」
「進む為に‥自分に言い聞かせるみたいな‥ここで断ち切るみたいな」
「オレ‥そこまで考えてなかったや、なんか感動っ」
「オレもっ」
「‥」
あー‥余計な事言ってしまった、失態。
「まあ捉え方は人それぞれだろ」
「でもオレもそこで涙でるよ!今こそ別れ目って」
「‥一応言っとくけど別れめって節目とかの意味じゃなくて別れむって意味だからな?」
「わかれむ‥わかれめ?
分かりませんっ!」
「もうどっちでもいいよ!トイレ行ってくる」
今日まで俺は先生と目も合わせないように避けて過ごしてきた。先生が家に来る事は無かったしあと数回学校へ行けばクラス替えがあって、先生の声を毎日聞く事だって無いだろう。
先生が考えさせてと言った答えはまだ貰えていない。春休み中には‥終わるだろうか‥
トイレで手を洗いながら鏡を覗き込む。
酷い顔だ。
目の下にはクマが出来て心なしか血色が悪い。
卒業式で‥
さっき壱が歌った歌の合唱を聞いた時、正直目頭が熱くなった。
別れめは節目ではないと言ったけど、今の俺には節目でしかない。
今こそ‥今こそ別れめ
いざさらば
俯いた顔を上げた先に‥先生が居て、目が合った気がした。
目頭が熱くなっていたせいで本当に目が合ったかはよく分からないけど‥
今も‥
頭の中で曲が流れ出して
そうすると先生が頭に浮かぶ
そうやって頭に浮かんだ先生は以前よりずっとずっと、遠くにいた
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