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きょろきょろと見渡しても自分の手も何もかもが見えない
真っ暗闇の中
意識だけの塊になったような気分で足を進める
足を進めているのか浮遊しているのかもよく分からない状態で、受ける風も無ければ音も聞こえない
恐怖心も不安も何もなく無に等しい俺の真っ黒な身体
ふと‥
後ろを振り返ると、遠くでキラキラと輝く何かが見えた
それは次第に大きくなり数を増していく
光り輝いているモノが近付いて来ているのだと分かる頃にはそれが沢山のスクリーンだという事も分かった
そのスクリーンに映し出されている内容は
俺の記憶だ
スクリーンの大きさは様々で数え切れない程のそれが俺を目掛けて近づいてくる
いや‥違う
近付いているのは自分だ
止まって振り返ったはずだったのに俺はいつの間にかスクリーンの方へ落ちていく
「っ!
いやだっやめろっ」
スクリーン1つ1つ
大切な俺の記憶なはずなのに
それを拒否し抵抗する
「くるなっ!
いらないっそんなモノいらないっ!」
落ちていく俺の身体は止まってはくれずスクリーンが目の前に来た瞬間
それは光の塊になって俺の中へ入ってきた
次々と流れ込むように
記憶が戻っていくように
意思が芽生えるように
笑顔も怒りも悲しみも涙も
俺の身体に入り込む
「いらないっ必要ないっ!
やめてくれよっ」
俺の記憶が‥光が‥
入り込む度に真っ黒だった俺の身体に色を付けて
全ての記憶が俺の中に戻った瞬間
一気に戻った感情が
雨のように涙を降らせ俺に降り掛かる
背中を強く打ちつけて沈む身体は涙の海に包まれて息ができない
「っ‥ッ」
もがいても足掻いても
苦しくて苦しくて
最後の助けを求めるように
必死に手を伸ばした
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